実務チートシート：break の使い方 ＋ Stream API への書き換え対比
使い方／例／対比をすぐ現場で使える形でまとめました。コピーしてそのままプロジェクトのコメントやノートに貼れます。
概要
break：ループ内で実行するとそのループを即終了し、ループの外側（次の処理）へ移る。- ネスト内の
breakはその書かれたループだけを抜ける。外側まで抜けたいときは ラベル付きbreakを使う。 - Stream では
findFirst()/anyMatch()/filter()等を使い早期終了に近い処理を書ける。ただし ラベル付き break 相当の外側ループまで一気に抜ける制御はできない（必要ならループで書くかメソッド分割）。
目次
- ASCII 図：
breakのイメージ - 実務パターン 5 + コード（for版 / Stream版）
- ベストプラクティス（ログ・例外・後処理）
- すぐ使えるテンプレート集（抜粋）
1. ASCII 図：break のイメージ
[ループ開始]
|
[処理]
|
(条件?)---Yes---> [break] ---> [ループを抜けて次の処理へ]
| No
[次の繰り返し]
|
[ループ終了]
ネスト時：
OuterLoop:
for i...
|
InnerLoop:
for j...
|
(条件?)---Yes---> break // only inner loop exits
|
next j
|
next i
// ラベル付き: break Outer; なら OuterLoop まで一気に抜ける
2. 実務パターン 5（コード表：for/while と Stream 対比）
パターン①：検索処理（最初に見つけたら終了）
用途：リスト・配列から最初に一致する要素だけ探す（検索）
for版（典型）
String target = "Charlie";
List<String> users = List.of("Alice","Bob","Charlie","David");
for (String name : users) {
if (name.equals(target)) {
System.out.println("見つけた: " + name);
break;
}
}
Stream版（置き換え可能）
Optional<String> found = users.stream()
.filter(name -> name.equals(target))
.findFirst();
found.ifPresent(name -> System.out.println("見つけた: " + name));
ポイント：Stream は表現が短く、並列化も効く。単純検索は findFirst() 推奨。
パターン②：リトライ処理（成功したら抜ける）
用途：外部API・ネットワーク接続で複数回リトライ
for版（典型）
final int MAX = 3;
for (int i = 1; i <= MAX; i++) {
if (tryCall()) {
System.out.println("成功");
break;
}
if (i == MAX) System.err.println("最大リトライ失敗");
}
Stream版（あまり向かない — 明示的にループが読みやすい）
Stream はリトライロジックには向かないため、ループで書くのが実務的。
（Spring の RetryTemplate や Resilience4j の使用が現場では多い）
ポイント：リトライは明示的なループ or ライブラリを使う。
パターン③：ユーザー入力の検証ループ
用途：CLI 等で正しい入力が来るまで再入力させる
while + break（典型）
Scanner sc = new Scanner(System.in);
while (true) {
System.out.print("年齢を入力: ");
int age = sc.nextInt();
if (age >= 0 && age <= 120) {
System.out.println("OK: " + age);
break;
}
System.out.println("不正な値。再入力してください。");
}
sc.close();
Stream版
ユーザー入力のような副作用ループは Stream に向かない。while の方が明確。
ポイント：副作用（I/O）を伴う反復はループで書く。
パターン④：ネストされたループでの外側も抜けたい（ラベル付き break）
用途：二重ループで「見つけたら全部抜ける」
ラベル付き break（典型）
Outer:
for (int i = 0; i < rows; i++) {
for (int j = 0; j < cols; j++) {
if (matrix[i][j] == target) {
System.out.println("発見: " + i + "," + j);
break Outer; // 外側も含めて一気に抜ける
}
}
}
Stream での代替（例：フラット化）
IntStream.range(0, rows)
.flatMap(i -> IntStream.range(0, cols)
.map(j -> i * cols + j))
.filter(idx -> {
int i = idx / cols, j = idx % cols;
return matrix[i][j] == target;
})
.findFirst()
.ifPresent(idx -> System.out.println("発見: " + (idx / cols) + "," + (idx % cols)));
注意：Stream の書き方は可読性が落ちる場合がある。ラベル付き break の方が直感的なケースも多い。
パターン⑤：異常値／不正検出で早期終了（ログ付き）
用途：データ処理中に不整合を見つけたら中断して調査する
for版（典型）
for (Record r : records) {
if (!r.isValid()) {
logger.error("不正データ: id=" + r.getId());
break;
}
process(r);
}
cleanup();
Stream版（ログを組み合わせる場合）
boolean hadInvalid = records.stream()
.peek(r -> { if (!r.isValid()) logger.error("不正: " + r.getId()); })
.anyMatch(r -> !r.isValid());
if (!hadInvalid) {
records.forEach(this::process);
}
cleanup();
ポイント：peek は副作用的なので注意。責務を分けた方が安全（バリデーション → 問題なければ処理）。
3. 実務ベストプラクティス（チェックリスト）
breakを使う前に「メソッドに切り出せないか」を検討する（可読性向上）。- ラベル付き
breakは便利だが 乱用厳禁。可読性を損なうならreturnでメソッドを抜ける、またはフラグを使う。 - ループ内で
breakを使う場合、必要な後処理（close, unlock, ログ等）が確実に実行されるかを確認する。try-with-resources/finallyを使う。 - 並列処理では
breakが意味をなさない（スレッドごとのループを止めるだけ）。並列処理時はFuture.cancel()やフラグ、並行制御を使う。 - Stream に置き換えるときは「副作用の有無」を検討：副作用あり（I/O・ログ・状態変更）はループのままの方が分かりやすいことがある。
- ログは「何を検出してなぜ中断したか」を明確に残す（ID・行番号などを出す）。
4. すぐ使えるテンプレート（コピーして使える）
テンプレートA：検索＋結果フラグ
boolean found = false;
for (Type t : collection) {
if (matches(t)) {
// 何か処理
found = true;
break;
}
}
if (!found) {
// 見つからなかった場合の処理
}
テンプレートB：リトライ（最大回数）
final int MAX_RETRY = 3;
for (int attempt = 1; attempt <= MAX_RETRY; attempt++) {
try {
if (doOperation()) {
// 成功
break;
}
} catch (IOException e) {
logger.warn("試行" + attempt + "で例外", e);
}
if (attempt == MAX_RETRY) {
// 最終失敗時の処理
} else {
Thread.sleep(1000); // バックオフ
}
}
テンプレートC：ラベル付き（慎重に）
Outer:
for (...) {
for (...) {
if (condition) {
// ログ残す等
break Outer;
}
}
}
5. よくある質問（FAQ）
- Q
breakとreturnの違いは？ - A
breakはループを抜けるだけ。returnはメソッドを終了して呼び出し元に戻る。処理の粒度で使い分ける。
- Q
continueとどう違う？ - A
continueはその繰り返しをスキップして次の繰り返しへ（ループは続く）。breakはループ自体を終了。
- QStream で完全に同じ制御は書けますか？
- A
単純検索や anyMatch/findFirst は簡単に置換可能。ただしネストのラベル付き break 相当の「外側も含めて一気に抜ける」制御や、I/O を伴う逐次処理は 読みやすさ優先で for/while を残すことが実務では多いです。
まとめ
- シンプルな検索や早期終了には
breakが強い味方。 - 可読性・副作用・並列性を考えて、必要なら Stream やライブラリ（RetryTemplate, Resilience4j）へ置き換える。