初心者向けに「float（浮動小数点数）」をやさしく噛み砕いて、実例と練習問題（解答付き）でしっかり解説します。コード例はすべて Python で動きます。
1) floatって何？簡単に説明
floatは「小数を扱う数」の型です。たとえば1.5、0.1、-3.14のような値。- 「小数点がある（または
.を付けた）数」はfloatとして扱われます。例：100.0はfloat、100はint（整数）です。
>>> type(1.5)
<class 'float'>
>>> type(100)
<class 'int'>
2) 基本的な演算ルール（例あり）
+,-,*,/は使えます。- 重要：
intとfloatを混ぜて計算すると結果はfloatになります。 /（通常の割り算）は常にfloatを返します（たとえ割り切れても1.0のように）。//（床（切り捨て）除算）は小数を切り捨てます。%は余り。
例：
>>> 10 + 3.5 # int + float -> float
13.5
>>> 6 / 3 # 割り算は float
2.0
>>> 7 // 2 # 切り捨て（整数除算）
3
>>> 7.0 // 2.0
3.0
>>> 7 % 2
1
3) 浮動小数点の「丸め誤差」について（超重要）
コンピュータは二進数で数を扱うため、有限のビット数で表現できない小数（たとえば 0.1）は近似値になります。そのため次のような結果になります：
>>> 0.1 + 0.2
0.30000000000000004
見た目と異なる小さな誤差が出ることがあるので、浮動小数点の比較は直接 == でやらないのが基本です。代わりに math.isclose() を使います。
import math
math.isclose(0.1 + 0.2, 0.3) # True
4) 型変換（int() と float()）
float(x)でxを浮動小数点に変換します。int(x)は小数点以下を 切り捨て ます（丸めではありません）。
>>> float(3)
3.0
>>> int(3.9)
3
>>> int(-3.9)
-3 # 注意：intは単純に切り捨て。負の方向の丸めとは違う
補足：小数点以下を四捨五入したいときは
round()を使います（次節で説明）。
5) 表示方法（見た目を整える）
round(x, n)：小数第n位に四捨五入。- f文字列や
format()で桁数を指定して表示できます。
>>> round(2.34567, 2)
2.35
>>> x = 2.34567
>>> f"{x:.2f}" # 小数点以下 2 桁で表示
'2.35'
>>> format(x, ".3f")
'2.346'
※ round() は内部的な丸めと表示の違いに注意（表示用に f"{x:.2f}" を多用すると安全）。
6) 比較するときの注意（== は危ない）
浮動小数点は誤差があるので、== での比較は避けます。代わりに math.isclose() を使うのが推奨です。
import math
a = 0.1 + 0.2
b = 0.3
a == b # False になることが多い
math.isclose(a, b) # True
math.isclose() は許容誤差（相対誤差・絶対誤差）を指定できます。
7) よく使う標準ライブラリ（math）
math モジュールに数学関数がいろいろあります。例：
import math
math.sqrt(2) # 平方根
math.pow(2, 3) # 2**3
math.floor(2.9) # 2 （小さい方の整数）
math.ceil(2.1) # 3 （大きい方の整数）
math.isclose(0.1+0.2, 0.3)
math.pi # 円周率
8) 実務でのベストプラクティス（初心者向け）
- お金を扱う（通貨計算）→
floatは避ける（丸め誤差が致命的）。decimal.Decimalを使う。 - 表示だけ丸めたい →
f"{x:.2f}"やround()を使う。 - 比較は
math.isclose()を使う。 - 整数で良いなら
intを使う。floatを不用意に使うと誤差が混じる。
9) 実用的な例（コード付き）
- 小数の合計と表示：
prices = [19.99, 5.5, 3.45]
total = sum(prices)
print(total) # 28.94（でも内部で少し誤差があることも）
print(f"合計: {total:.2f} 円") # 表示は 2 桁で見やすく
- 切り捨て除算と余り：
a, b = 7, 2
print(a // b) # 3
print(a % b) # 1
- 小数同士の切り捨て：
print(7.5 // 2.0) # 3.0
- 浮動小数点の比較：
import math
a = 0.1 + 0.2
print(a == 0.3) # False
print(math.isclose(a, 0.3)) # True
10) 練習問題（解答＆解説付き）
初心者向けに段階をつけた 5 問。まずは自力で解いてから答えを見てください。
問題1（基礎）
変数 a = 5（int）と b = 2.0（float）の和を計算して、結果の型を表示してください。
期待される出力：値と type がわかれば OK。
解答例
a = 5
b = 2.0
c = a + b
print(c, type(c)) # 7.0 <class 'float'>
解説：int + float は float になります。
問題2（割り算）
7 / 2 と 7 // 2 の違いを実際に出力して確認してください。
解答例
print(7 / 2) # 3.5
print(7 // 2) # 3
解説：/ は浮動小数点の割り算、// は切り捨て。
問題3（丸め誤差）
次のコードを実行して出力を確認してください。なぜ False になるのか説明してください。
print(0.1 + 0.2 == 0.3)
解答
# 出力は False
# 理由: 0.1, 0.2, 0.3 は二進数で正確に表せないため、内部に小さな誤差があるから。
補足：比較するなら math.isclose(0.1+0.2, 0.3) を使う。
問題4（四捨五入と表示）
変数 x = 2.6789 を小数点以下 2 桁で表示するコードを書いてください（2.68 と表示）。
解答例
x = 2.6789
print(round(x, 2)) # 2.68
print(f"{x:.2f}") # '2.68'（文字列）
問題5（実務的注意）
「商品の合計金額の計算（複数商品の小数）」に float を使う問題点を 1 つ書いてください。
模範解答：丸め誤差により合計が正確にならず、特に通貨計算では金額がずれる可能性があるため decimal.Decimal を使うべき。
11) 参考：decimal を使うとどうなるか（短い紹介）
お金など正確さが必要なら decimal.Decimal を使います。
from decimal import Decimal
a = Decimal("0.1")
b = Decimal("0.2")
print(a + b == Decimal("0.3")) # True
Decimal("0.1") のように文字列で渡すのがポイント（Decimal(0.1) は float の誤差を引き継ぐため避ける）。
まとめ
floatは便利だが「丸め誤差」がある点に注意。- 表示は
f"{x:.2f}"、比較はmath.isclose()、通貨はdecimal.Decimal。 - 基本操作（
+ - * / // %）はすぐ使えるので、まずコードを書いて動かしてみるのが上達の近道！
