では「関数」を初心者向けにやさしく噛み砕いて、たっぷりの例題と解説で進めます。実際に手を動かしやすいように、短いコードスニペット→説明→発展例、という流れにします。複雑な部分は図的に説明しますが、まずはコードを写して動かしてみるのが一番学べます。
関数って何？
関数は「名前のついた処理（機能）のまとまり」です。
一度作っておけば、何度でも呼び出して使えます。
イメージ：レシピ（関数）に材料（引数）を渡すと、料理（戻り値）ができる感じ。
関数の基本：呼び出し（組み込み関数の例）
print("Hello") # print は組み込み関数（画面に表示する処理）
abs(-5) # abs は絶対値を返す関数 → 結果は 5
round(3.1415, 2) # → 3.14（小数点第2位まで丸める）
print,abs,roundは最初から使える（組み込み）関数。- 関数を使うときは
関数名(引数1, 引数2, ...)の形。
自分で関数を作る（定義の基本）
def greet():
print("こんにちは！")
defで関数を定義。greet()と呼び出すと中の処理が実行されます：
greet() # 出力: こんにちは！
引数と戻り値（基本）
引数：関数に渡す情報。
戻り値：関数が返す結果（returnで返す）。
例：
def add(a, b):
return a + b
result = add(3, 4) # result は 7
print(result) # 出力: 7
a,bはパラメータ（定義側の名前）、3,4は引数（呼び出し側の値）。
位置引数 vs キーワード引数
def describe(name, age):
print(name, "さんは", age, "歳です")
describe("太郎", 20) # 位置引数
describe(age=30, name="花子") # キーワード引数（順序を気にしない）
デフォルト引数（省略可能な引数）
def power(x, n=2):
return x ** n
print(power(3)) # 3の2乗 → 9（n を省略した場合は 2）
print(power(3, 3)) # 3の3乗 → 27
- デフォルト引数は定義で値を与えておくことで、呼び出し時に省略可能にします。
可変長引数（*args と **kwargs）
複数の値を柔軟に受け取る方法。
*args：位置引数をタプルで受け取る
def sum_all(*args):
total = 0
for x in args:
total += x
return total
print(sum_all(1,2,3,4)) # → 10
**kwargs：キーワード引数を辞書で受け取る
def print_info(**kwargs):
for k, v in kwargs.items():
print(k, "=", v)
print_info(name="A", age=20)
# 出力:
# name = A
# age = 20
複数の値を返す（実は1つのタプル）
def divmod_pair(a, b):
return a // b, a % b
q, r = divmod_pair(7, 3)
print(q, r) # → 2 1
returnに複数値を書くと、Pythonはタプルとして返します。受け取り側でアンパックできます。
関数の中の変数（スコープの基本）
- 関数内で定義した変数はローカル（その関数内でだけ有効）。
- 関数外の変数はグローバル。ただし、関数内でグローバル変数を変更するには
global宣言が必要（でも多用は推奨されない）。
例：
x = 10 # グローバル
def f():
x = 5 # ローカル（グローバル x を変更しない）
print("関数内x:", x)
f() # 関数内x: 5
print("外のx:", x) # 外のx: 10
無名関数（lambda）
簡単な一行関数をその場で作れる。可読性を保つ範囲で使う。
square = lambda x: x * x
print(square(5)) # → 25
高階関数（関数を引数に取ったり返したり）
map,filter,sortedなどの関数は、他の関数を引数に取ります。
例（map + lambda）：
nums = [1,2,3,4]
doubled = list(map(lambda x: x*2, nums))
print(doubled) # → [2,4,6,8]
ドキュメンテーション文字列（docstring）
関数が何をするかを書いておくと便利（自分や他人のため）。
def greet(name):
"""名前を受け取って挨拶を表示する関数"""
print("こんにちは、" + name + "さん！")
help(greet)で docstring を確認できます。
よくあるミス・注意点
returnを忘れるとNoneが返る（意図せずNoneを扱ってエラーになることがある）。
def bad():
print("こんにちは")
print(bad()) # None が出力される
- デフォルト引数に ミュータブル（listやdict） を使うと状態が共有されて問題になる。
def append_item(item, lst=[]): # NG パターン
lst.append(item)
return lst
print(append_item(1)) # [1]
print(append_item(2)) # [1, 2] ← 共有されてしまう
→ 安全な書き方：
def append_item(item, lst=None):
if lst is None:
lst = []
lst.append(item)
return lst
実践的な例題（ステップで理解）
例題1：偶数か判定する関数
def is_even(n):
return n % 2 == 0
print(is_even(4)) # True
print(is_even(5)) # False
例題2：リスト内の最大値を返す（組み込み max を使わないで）
def my_max(numbers):
if not numbers:
return None
biggest = numbers[0]
for v in numbers[1:]:
if v > biggest:
biggest = v
return biggest
print(my_max([3, 7, 2])) # → 7
例題3：ユーザーからの入力を受け取り、数の平均を返す関数
def average_of_list(nums):
if not nums:
return 0
return sum(nums) / len(nums)
print(average_of_list([10,20,30])) # → 20.0
例題4：可変長引数で最小・最大を返す
def min_and_max(*args):
if not args:
return None, None
return min(args), max(args)
mi, ma = min_and_max(3,5,1,9)
print(mi, ma) # → 1 9
練習問題
※下に解答も載せます。まずは自分で考えてから確認してください。
基礎
square(n)：n の2乗を返す関数を作れ。is_palindrome(s)：文字列 s が回文（前から読んでも後ろから読んでも同じ）か判定する関数を作れ。
中級
3. count_vowels(s)：文字列 s の母音（a,e,i,o,u、大小区別しない）を数える関数。
4. filter_even(nums)：リスト nums から偶数だけを取り出して新しいリストで返す関数。
上級
5. factorial(n)：再帰を使って n! を計算する関数（ただし n >= 0）。
6. word_frequencies(text)：文字列 text を単語に分割して、各単語の出現回数を辞書で返す関数（大文字小文字は区別しない）。
練習問題 解答（サンプル）
# 1
def square(n):
return n * n
# 2
def is_palindrome(s):
s2 = s.lower().replace(" ", "") # 大文字小文字、空白を無視する簡易版
return s2 == s2[::-1]
# 3
def count_vowels(s):
s = s.lower()
return sum(1 for ch in s if ch in "aeiou")
# 4
def filter_even(nums):
return [x for x in nums if x % 2 == 0]
# 5
def factorial(n):
if n == 0 or n == 1:
return 1
return n * factorial(n - 1)
# 6
def word_frequencies(text):
words = text.lower().split()
freq = {}
for w in words:
freq[w] = freq.get(w, 0) + 1
return freq
発展トピック（興味があれば）
- 型ヒント（type hints）：
def add(a: int, b: int) -> int:のように書いて型を明示できる（実行はされないが可読性とツール補助に有利）。 - デコレータ：関数をラップして機能を付け加える高度なテクニック。
- モジュール化：関数をファイル（モジュール）にまとめて、別のファイルから読み込む（
import）方法。
まとめ（初心者が押さえるべきポイント）
- 関数 = 名前付きの処理のまとまり。
defで定義して関数名()で呼ぶ。 - 引数（渡す値）と戻り値（返ってくる値）を意識する。
- デフォルト引数、
*args/**kwargs、戻り値のアンパックなどは便利な道具。 - グローバル変数を不用意に変更しない。可読性を重視する。
- 小さく単機能の関数を作る（1つの関数は1つの目的）ことが保守性を上げる。