Offset（オフセット）って何？
Offset は「ある基準セルから、行・列を相対的にずらした場所のセル」を指し示すためのプロパティです。
イメージ：基準セルが 出発点（0,0）、Offset(1,2) は「下に1、右に2」移動した場所を指します。
Offset(RowOffset, ColumnOffset)RowOffset：行方向のずらし（正＝下へ、負＝上へ、0＝同じ行）ColumnOffset：列方向のずらし（正＝右へ、負＝左へ、0＝同じ列）
- 省略可：
Offset(ColumnOffset:=2)のように名前付き引数で列だけ指定できます。
基本例（まずはこれを試してみて）
Sub Example1_BasicOffset()
' 基準：セル C3
Dim r As Range
Set r = Range("C3").Offset(1, 2) ' C3 から 1行下、2列右 → E4
r.Interior.ColorIndex = 6 ' 背景色を変更（見やすくするため）
End Sub
解説：Range("C3").Offset(1,2) は E4 を返すので、そのセルの色を変えます。
使い方パターン（よく使う場面ごとに例題）
1) 「隣のセル」に値を書き込む
右隣に計算結果を入れたいとき：
Sub Example2_WriteRight()
Dim base As Range
Set base = Range("B2")
base.Offset(0, 1).Value = base.Value * 2 ' B2 の右隣（C2）に B2*2 を書く
End Sub
2) 負のオフセット（上や左に行く）
Sub Example3_NegativeOffset()
Range("D5").Offset(-2, -1).Value = "ここはB3" ' D5 から上2行・左1列 → B3
End Sub
3) ループで「横にずらしながら」処理する（For）
見出し行の右に順に値を入れる例：
Sub Example4_LoopOffset()
Dim startCell As Range
Set startCell = Range("A1") ' A1 をスタート
Dim i As Integer
For i = 0 To 4
startCell.Offset(0, i).Value = "項目" & (i + 1)
Next i
End Sub
4) 表の「隣列を合計して書く」実務的な例
各行の B 列〜D 列の合計を E 列へ：
Sub Example5_RowSumToRight()
Dim r As Range
Dim lastRow As Long
lastRow = Cells(Rows.Count, "B").End(xlUp).Row ' B列の最終行
For Each r In Range("B2:B" & lastRow)
r.Offset(0, 3).Value = WorksheetFunction.Sum(r, r.Offset(0, 1), r.Offset(0, 2))
' r = B列、r.Offset(0,1)=C列、r.Offset(0,2)=D列、r.Offset(0,3)=E列
Next r
End Sub
5) 範囲ごとずらしてコピーする（Resize と併用）
2×3 のブロックを 3列右にコピー：
Sub Example6_CopyBlockWithOffset()
Dim src As Range
Set src = Range("A1").Resize(2, 3) ' A1 から 2行×3列 のブロック
src.Copy Destination:=src.Offset(0, 3) ' 右に3列ずらして貼る
End Sub
Resize は範囲サイズを変えるメソッドで、Offset と組むと便利です。
エラー回避（端に行ってしまう問題）
Worksheet の端（最上行/最左列/最下行/最右列）近くで大きくオフセットすると存在しないセルを参照してエラーになります。安全に使う方法：
Function IsOffsetValid(base As Range, rOffset As Long, cOffset As Long) As Boolean
Dim newRow As Long, newCol As Long
newRow = base.Row + rOffset
newCol = base.Column + cOffset
If newRow < 1 Or newCol < 1 Then
IsOffsetValid = False
Exit Function
End If
If newRow > base.Worksheet.Rows.Count Or newCol > base.Worksheet.Columns.Count Then
IsOffsetValid = False
Exit Function
End If
IsOffsetValid = True
End Function
Sub Example7_SafeOffset()
Dim b As Range
Set b = Range("A1")
If IsOffsetValid(b, -1, 0) Then
b.Offset(-1, 0).Value = "上へ"
Else
MsgBox "上に移動できません（シート端）"
End If
End Sub
よくある質問（Q&A 形式）
- Q
OffsetとCellsはどう使い分ける？ - A
Offsetは「相対移動」に強い。Cells(row, col)は「絶対位置を数値で指定」するときに便利（例えばCells(i, j)をループで使う）。両方併用すると柔軟です：Cells(1,1).Offset(2,3)も可能。
- Q
Offsetは範囲にも使える？ - A
使えます。
Range("A1:B2").Offset(1,1)はそのブロックを下1・右1移動したブロックを返します。
- Q
Offsetの戻り値は Range ？ - A
はい。Range オブジェクトなので
.Value,.Interior,.Copyなどがそのまま使えます。
練習問題
- シート
A1を基準に、斜め下に 5 個のセル（A1, B2, C3, D4, E5）に順に 1〜5 を書くマクロを作ってみる。 - B2:B10 の右隣の列に、各行の B 列の 2 倍を書き込むマクロを作る。
- 表の最終行を自動で検出して、最終行の右隣に「合計」と書くマクロを作る（
Offsetを使う）。
解答と解説
練習問題 1
A1 を基準に、斜め下に 5 個のセル（A1 → B2 → C3 → D4 → E5）へ 1〜5 を書く
解答コード（初心者向けに超シンプル）
Sub Answer1_DiagonalNumbers()
Dim startCell As Range
Set startCell = Range("A1")
Dim i As Long
For i = 0 To 4
startCell.Offset(i, i).Value = i + 1
' i=0 → A1
' i=1 → B2
' i=2 → C3 …というふうに斜めに進む
Next i
End Sub
解説
Offset(i,i)なので、行も列も同じ分だけ下へ右へ動く→斜めになる- ループが 5 回まわるので 1〜5 が順に斜めに入力される
練習問題 2
B2:B10 の右隣（C 列）に、B列の2倍を書き込む
解答コード
Sub Answer2_MultiplyRight()
Dim r As Range
For Each r In Range("B2:B10")
r.Offset(0, 1).Value = r.Value * 2
' Offset(0,1) →右隣の列（C列）
Next r
End Sub
解説
For Each r In Range("B2:B10")で B2〜B10 を順に取り出すr.Offset(0,1)は右隣（C列）r.Value * 2を書き込むだけ- ループしながら横に書くときは Offset が最強
練習問題 3
表の最終行を自動で検出し、最終行の右隣に「合計」と書く（Offset を使う）
（※ B 列にデータが入っている表を想定）
解答コード
Sub Answer3_WriteTotal()
Dim lastRow As Long
Dim targetCell As Range
' B列の最終行を自動取得
lastRow = Cells(Rows.Count, "B").End(xlUp).Row
' B列の最終行のセルを基準とする
Set targetCell = Cells(lastRow, "B")
' 右隣（ColumnOffset:=1）に「合計」を書く
targetCell.Offset(0, 1).Value = "合計"
End Sub
解説
Cells(Rows.Count, "B").End(xlUp).Row
→ B列の下端から上に向かってデータを探し、最後の行番号を取る- その行の B 列セルを
targetCellとする targetCell.Offset(0,1)→ 右隣（C列）- そこへ
"合計"と書き込む
まとめ（初心者向けワンポイント）
Offset= 「基準から何行・何列ずらすか」を指定する方法。直感的でループ処理で非常に便利。- シート端のチェックを忘れないこと。大きくずらすとエラーになる。
Resizeと組むとブロック操作が簡単になる。- 実際に小さなマクロを何回も試すと速く覚えられます。