IdentityHashMap（== でキー比較） — 特殊用途
IdentityHashMap は Java の特殊な Map 実装で、キーの比較に equals() ではなく ==（参照同一性） を使います。
初心者が理解すべきポイントは「同じ内容でも別インスタンスなら別キー扱いになる」ということです。
特徴
- キー比較:
==を使う → 参照が同じオブジェクトだけ同一キーとみなす。 - 用途:
- オブジェクトの「実体そのもの」を区別したいとき。
- シリアライズや内部処理で「同一インスタンスかどうか」を判定したいとき。
- 一般用途には不向き: 普通の辞書用途なら
HashMapを使うべき。 - サイズ: 内部的に配列ベースで軽量。
基本コード例
1. HashMap との違い
import java.util.*;
public class IdentityHashMapDemo {
public static void main(String[] args) {
Map<String, String> hashMap = new HashMap<>();
Map<String, String> identityMap = new IdentityHashMap<>();
String a1 = new String("key");
String a2 = new String("key"); // 内容は同じだが別インスタンス
hashMap.put(a1, "value1");
hashMap.put(a2, "value2");
identityMap.put(a1, "value1");
identityMap.put(a2, "value2");
System.out.println("HashMap: " + hashMap); // {key=value2} （equalsで同一扱い）
System.out.println("IdentityHashMap: " + identityMap); // {key=value1, key=value2} （==で別扱い）
}
}
👉 ポイント: HashMap は内容が同じなら上書き、IdentityHashMap は別インスタンスなら別キー。
2. 同一インスタンスなら同じキー
IdentityHashMap<Object, String> map = new IdentityHashMap<>();
Object obj = new Object();
map.put(obj, "data");
System.out.println(map.get(obj)); // data
System.out.println(map.get(new Object())); // null （別インスタンスなので一致しない）
よく使う場面
- シリアライズ処理: オブジェクト参照を追跡し、同じインスタンスを複数回出力しないようにする。
- 内部キャッシュ: 「同じ内容でも別インスタンスなら別物」として扱う必要がある場合。
- 特殊用途: フレームワークやライブラリの内部処理で利用されることが多い。
例題で練習
例題1: インスタンスごとの識別
IdentityHashMap<Object, Integer> ids = new IdentityHashMap<>();
Object o1 = new Object();
Object o2 = new Object();
ids.put(o1, 100);
ids.put(o2, 200);
System.out.println(ids.get(o1)); // 100
System.out.println(ids.get(o2)); // 200
👉 同じ equals を持つオブジェクトでも、インスタンスが違えば別キー。
例題2: シリアライズ時の参照追跡
IdentityHashMap<Object, Integer> seen = new IdentityHashMap<>();
Object obj = new Object();
if (!seen.containsKey(obj)) {
seen.put(obj, 1); // 初回出現
} else {
System.out.println("既に出現済み");
}
👉 同じインスタンスを複数回処理しないようにする用途。
テンプレート集
宣言
Map<KeyType, ValueType> map = new IdentityHashMap<>();
追加
map.put(key, value);
取得
ValueType v = map.get(key); // == で一致するキーのみ取得可能
存在確認
boolean exists = map.containsKey(key);
実務でのコツ
- 通常用途には使わない: 普通の辞書は
HashMap。IdentityHashMap は特殊ケース専用。 - equals/hashCode 無視: 内容比較ではなく参照比較なので、混乱しやすい。
- フレームワーク内部でよく使われる: 開発者が直接使うことは少ないが、仕組みを理解しておくと役立つ。
- GC と関係なし: WeakHashMap のように GC で消えるわけではない。
まとめ
- IdentityHashMap は「==」でキー比較する特殊な Map。
- 同じ内容でも別インスタンスなら別キー扱い。
- シリアライズや内部処理など特殊用途に使われる。
👉 練習課題として「同じ文字列内容でもインスタンスごとに別の値を保持する」プログラムを書いてみると、IdentityHashMap の特徴が体感できます。