概要
STDEV.Sは「標本データの標準偏差」を求める関数です。母集団から抽出したサンプル(標本)に対して不偏推定(分母が n−1)で計算します。データの「ばらつき(散らばりの大きさ)」を1つの数値で表し、工程の安定性確認、テスト点数の分布把握、売上の変動評価などに使えます。
基本の使い方
書式
=STDEV.S(数値1, [数値2], …)
範囲を渡すのが一般的です。
=STDEV.S(範囲)
例
=STDEV.S(B2:B21)
B2:B21のデータ(20件)の標準偏差を求めます。結果が小さいほど値が平均に近く、大きいほど散らばりが大きいと解釈します。
具体例
単一列の標準偏差を求める
点数がB2:B21にあるとき:
=STDEV.S(B2:B21)
平均とセットで見ると理解が深まります。
=AVERAGE(B2:B21)
月ごとの売上の標準偏差(テーブル参照)
テーブル「売上」で、列「金額」の標準偏差:
=STDEV.S(売上[金額])
当月データだけに絞る場合(H1に対象月のシリアル or “2025-12” 形式が入っている想定):
=STDEV.S(IF(MONTH(売上[日付])=MONTH(H1), 売上[金額]))
配列式が必要な環境ではCtrl+Shift+Enter。Microsoft 365なら通常の確定でOKです。
条件付きでグループ別の標準偏差
カテゴリがA列、金額がB列。現在行のカテゴリに属するデータの標準偏差を求める:
=STDEV.S(IF($A$2:$A$200=A2, $B$2:$B$200))
この式をC2に入れて下へコピーします(配列式環境ではCtrl+Shift+Enter)。
よくあるつまずきと対策
STDEV.SとSTDEV.Pの違い
標本ならSTDEV.S(分母 n−1)、母集団全体ならSTDEV.P(分母 n)。データの意味に応じて使い分けます。
=STDEV.P(B2:B21) // 母集団の標準偏差
非数値や空白の扱い
文字列や空白は自動で無視されますが、数値に見える文字列は混入すると集計漏れの原因になります。必要なら数値列を統一するか、別列でVALUEを使って正規化してから計算します。
外れ値の影響
標準偏差は外れ値に敏感です。異常値が混ざっている可能性があるときは、外れ値除外のルールを定めてから計算するか、中央値や四分位範囲(IQR)も合わせて確認します。
データが少ないときの不安定さ
標本サイズが小さいと推定が不安定になります。可能ならサンプル数を増やす、期間を延ばす、母集団前提でSTDEV.Pを検討するなどで安定性を高めます。
応用テンプレート
条件付き標準偏差(複数条件)
プロジェクトAかつ当月の金額の標準偏差:
=STDEV.S(IF(($A$2:$A$200="プロジェクトA")*(TEXT($B$2:$B$200,"yyyy-mm")=TEXT(H1,"yyyy-mm")), $C$2:$C$200))
H1に対象月の日付を入れておくと運用が楽です。
テーブルと構造化参照で可読性を上げる
テーブル「売上」で、地域=東京の金額の標準偏差:
=STDEV.S(IF(売上[地域]="東京", 売上[金額]))
標準偏差からばらつきの目安を示す
平均±1σに約多くのデータが収まることが多い(正規分布の前提)。報告用の目安表示:
="平均: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21),"0.00")&" / σ: "&TEXT(STDEV.S(B2:B21),"0.00")
必要なら「平均±σ」帯をあわせて示します。
="帯: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21)-STDEV.S(B2:B21),"0.00")&" 〜 "&TEXT(AVERAGE(B2:B21)+STDEV.S(B2:B21),"0.00")
練習問題
問題1: 列B(B2:B21)の標準偏差をC2に表示してください
解答例:
=STDEV.S(B2:B21)
問題2: テーブル「売上」の列「金額」の標準偏差をセルH2に表示してください
解答例:
=STDEV.S(売上[金額])
問題3: カテゴリA列、金額B列。現在行(A2)のカテゴリに属する金額の標準偏差をC2に表示してください
解答例:
=STDEV.S(IF($A$2:$A$200=A2, $B$2:$B$200))
(配列式が必要な環境ではCtrl+Shift+Enter)
問題4: 日付A列、金額B列。A2の日付と同じ月の金額の標準偏差をC2に表示してください
解答例:
=STDEV.S(IF(TEXT($A$2:$A$200,"yyyy-mm")=TEXT(A2,"yyyy-mm"), $B$2:$B$200))
問題5: 平均と標準偏差を併記して「平均±σ」の帯をD2に文字列で表示してください
解答例:
="平均: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21),"0.00")&" / σ: "&TEXT(STDEV.S(B2:B21),"0.00")&
" / 帯: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21)-STDEV.S(B2:B21),"0.00")&"〜"&TEXT(AVERAGE(B2:B21)+STDEV.S(B2:B21),"0.00")
まとめ
STDEV.Sは標本の標準偏差を求める関数で、ばらつきの指標として実務で広く使えます。母集団ならSTDEV.Pを選び、条件付きの集計はIFと組み合わせると柔軟に対応できます。外れ値やデータ型の混在に注意しつつ、平均とセットで解釈すると伝わりやすくなります。必要に応じてテーブル参照やTEXTでの見せ方も活用してください。
