概要
ABSは「数値の絶対値」を返す関数です。絶対値とは「数直線上でゼロからの距離」であり、負の数を正に変換します。正の数やゼロはそのまま返されます。差分の大小比較、誤差の評価、距離や金額の計算などでよく使われます。
基本の使い方
書式
=ABS(数値)
- 数値が正ならそのまま返す
- 数値が負なら符号を外して正にする
- 数値がゼロなら0を返す
判定例
=ABS(10) // 10
=ABS(-10) // 10
=ABS(0) // 0
=ABS(A2) // A2の値の絶対値
具体例
差分の大きさを評価
=ABS(B2 - A2)
A2とB2の差が正か負かに関わらず「差の大きさ」を返します。誤差や偏差の計算に便利です。
売上の増減幅を金額で表示
=ABS(今年売上 - 昨年売上)
増減方向ではなく「増減幅」を金額で示せます。
距離や時間の差を常に正で表示
=ABS(終了時刻 - 開始時刻)
開始と終了の順序が逆でも正の値で差を返します。
応用テンプレート
誤差率の計算
=ABS(実測値 - 予測値) / 予測値
誤差の大きさを割合で表すことができます。
条件付きで「誤差が一定以上なら警告」
=IF(ABS(B2 - A2) > 5, "警告", "OK")
差が5以上なら「警告」、そうでなければ「OK」と表示。
金額の符号を無視して合計
=SUM(ABS(B2:B100))
古いExcelでは配列数式(Ctrl+Shift+Enter)が必要。Microsoft 365ならそのまま確定でOK。収入と支出を「金額の大きさ」として合算できます。
平均偏差の計算
=AVERAGE(ABS(B2:B100 - AVERAGE(B2:B100)))
各値と平均の差の絶対値を平均して「平均偏差」を求めます。
よくあるつまずきと対策
負数が正になるのは理解できるが「方向」が消える
ABSは方向を無視して大きさだけ返します。増減方向を知りたい場合はSIGN関数を併用します。
=SIGN(B2 - A2) // -1,0,1で方向を返す
配列での合計に注意
範囲にABSを直接かけてSUMする場合、古いExcelでは配列数式が必要です。Microsoft 365なら通常の確定で動作します。
日付や時刻の扱い
Excel内部では日付や時刻は数値なのでABSで差を取ることができます。ただし結果は日数や時間の数値になるため、表示形式を調整してください。
例題
問題1: A2とB2の差の絶対値をC2に表示
解答例:
=ABS(B2 - A2)
問題2: 昨年売上A2、今年売上B2。増減幅をC2に表示
解答例:
=ABS(B2 - A2)
問題3: 実測値C2、予測値D2。誤差率をE2に表示
解答例:
=ABS(C2 - D2) / D2
問題4: B列の金額を符号無視で合計しC2に表示(Microsoft 365)
解答例:
=SUM(ABS(B2:B100))
問題5: B列の値の平均偏差をC2に表示
解答例:
=AVERAGE(ABS(B2:B100 - AVERAGE(B2:B100)))
まとめ
ABSは「数値の大きさだけを返す」シンプルな関数です。差分の誤差評価、金額や距離の計算、符号を無視した合計などに広く使えます。方向を知りたい場合はSIGN、数値かどうかを判定したい場合はISNUMBERと組み合わせるとさらに便利です。
