概要
POWERは「べき乗(xのy乗)」を計算する関数です。例えば 2の3乗(2×2×2)を求めるなら POWER(2,3) を使います。指数が小数でも計算でき、平方根や立方根のような根も「指数の逆数」で表せます。演算子「^」でも同じ計算ができますが、関数のほうが読みやすく、他関数との組み合わせで扱いやすい場面が多いです。
基本の使い方
書式
=POWER(底, 指数)
底は「元の数」、指数は「何乗か」を表します。たとえば底=5、指数=2なら5の2乗(25)です。
例
=POWER(2, 3) // 8
=POWER(5, 2) // 25
=POWER(10, 0.5) // 10の平方根(≈3.1623)
=POWER(A2, B2) // セル参照でA2のB2乗
演算子で書く場合は
=2^3
=A2^B2
で同等です。
具体例
成長の累乗(複利や年成長)
年成長率g、年数n、初期値vから将来値を求める例です。
=初期値 * POWER(1 + 成長率, 年数)
たとえば初期値=100、成長率=5%、年数=3なら
=100 * POWER(1+0.05, 3) // ≈115.7625
スケーリング(べき法則)
サイズSを2倍にしたときの効果が「S^α」のように指数で効くモデル。
=POWER(S, α)
α=0.5なら「平方根スケール」、α=3なら「立方スケール」です。パラメータをセルに置くと調整が簡単です。
=POWER($B$2, $C$2)
根の計算(平方根・立方根・n乗根)
根は指数の逆数で表せます。
=POWER(数値, 1/2) // 平方根
=POWER(数値, 1/3) // 立方根
=POWER(数値, 1/n) // n乗根
例:
=POWER(81, 1/4) // 81の4乗根 → 3
応用テンプレート
正規化(最小二乗や誤差ペナルティ)
誤差eの二乗やp乗のペナルティを与える例。
=POWER(誤差, 2)
=POWER(誤差, p)
pをセル指定して動的に調整できます。
=POWER(D2, $E$1)
距離の計算(pノルムの一部)
2次元点のpノルム(簡易例)。厳密なpノルムは「(|x|^p + |y|^p)^(1/p)」です。
=POWER(POWER(ABS(X), p) + POWER(ABS(Y), p), 1/p)
指数的減衰・増幅のモデル化
パラメータk、時間tで指数的に変化するモデル。
=初期値 * POWER(減衰率, t)
減衰率が1未満なら減少、1超なら増加。たとえば減衰率=0.8、t=5なら
=100 * POWER(0.8, 5) // ≈32.768
べき乗の合成とログ変換
べき乗を解く・線形化するための補助。ログと併用することが多いです。
=POWER(10, 指数) // 10^指数
指数がログ値の場合の逆変換に使えます。
よくあるつまずきと対策
負の数の小数乗でエラーや複素数
Excelの通常関数は実数域で動作します。底が負で指数が小数だと複素数領域に入るため期待通りに計算できません。負の数に対しては「整数指数」に限定するか、モデル側でABSや符号分離を検討してください。
=POWER(-8, 1/3) // 実数の -2 を期待しても計算は不安定
整数指数なら問題ありません。
=POWER(-2, 3) // -8
0の負乗(ゼロ除算相当)
指数が負(例: -1)のとき 0^(-1) は未定義でエラーになります。ゼロチェックを入れて保護します。
=IF(A2=0, "", POWER(A2, -1))
浮動小数の丸め誤差
1/3 などの分数は二進小数で近似されるため、結果に微小誤差が出ます。表示用には丸めを併用します。
=ROUND(POWER(A2, 1/3), 6)
演算子「^」との優先順位の違い
複雑な式では括弧で明示的に順序を示すと安全です。
=POWER(A2, B2+C2) // A2^(B2+C2)
=A2^(B2+C2) // 同等だが括弧必須
例題
問題1: 2の10乗をC2に表示
解答例:
=POWER(2, 10)
問題2: A2の平方根をB2に表示
解答例:
=POWER(A2, 1/2)
問題3: 初期値B2、年成長率C2(%)、年数D2の将来値をE2に表示
解答例:
=B2 * POWER(1 + C2, D2)
セルのC2は割合(例: 5%)として扱います。
問題4: 誤差X2のp乗ペナルティ(pはY1)をZ2に表示
解答例:
=POWER(X2, $Y$1)
問題5: 2次元pノルム距離(座標がA2,B2、pがC2)をD2に表示
解答例:
=POWER(POWER(ABS(A2), C2) + POWER(ABS(B2), C2), 1/C2)
まとめ
POWERは「底の指数乗」を計算するべき乗関数で、成長・減衰・誤差評価・根の計算まで幅広く使えます。負の底に小数指数は避け、ゼロの負乗は保護し、丸め誤差にはROUNDで対応すると堅牢です。演算子「^」でも同じ計算が可能ですが、複雑な式ではPOWERを使うと意図が明確になり、保守しやすくなります。
