for ループの概要（反復処理の基本）
for ループは「並び（イテラブル）の要素を先頭からひとつずつ取り出して処理する」ための構文です。リスト、タプル、文字列、辞書、集合、range() などに対して使えます。Pythonの for は「カウンタを自分で増やす」スタイルではなく「要素そのものを受け取る」ため、読みやすくミスが少ないのが特徴です。
基本構文とイテラブル（ここが重要）
基本の書き方
コロン「:」でブロック開始、次の行からインデントして処理を書きます。
fruits = ["apple", "banana", "orange"]
for fruit in fruits:
print(fruit)
文字列も1文字ずつ処理できます。
for ch in "Python":
print(ch)
range() で回数を指定
range(n) は 0 から n-1 までの連番を作ります。開始・終了・ステップも指定可能です。
for i in range(5): # 0,1,2,3,4
print(i)
for i in range(1, 10, 2): # 1,3,5,7,9
print(i)
「終了は含まれない」ことがポイントです。オフバイワン（±1のズレ）を避けるため、意図する範囲を明確にしましょう。
実用的な取り回し（辞書・集合・インデックス）
辞書のループ
キー、値、ペアで回す方法を使い分けます。
user = {"name": "花子", "age": 25}
for k in user: # キー
print(k)
for v in user.values(): # 値
print(v)
for k, v in user.items(): # キーと値
print(k, v)
インデックスが必要なときは enumerate()
手でカウンタを管理するより、enumerate() を使うと安全で読みやすいです。
scores = [70, 85, 90]
for idx, s in enumerate(scores, start=1):
print(f"{idx}番目: {s}")
複数の並びを同時に回す zip()
長さを合わせて、同じ位置の要素をペアで受け取ります。
names = ["太郎", "花子"]
points = [92, 88]
for name, point in zip(names, points):
print(name, point)
制御構文との組み合わせ（break / continue / else）
break で途中終了
条件を満たしたらループを抜けます。
for n in [10, 20, 30, 40]:
if n == 30:
print("見つかった")
break
continue でスキップ
該当要素だけ処理を飛ばして次へ。
for s in ["ok", "", "done"]:
if not s:
continue
print("処理:", s)
for-else の使いどころ（深掘り）
ループが break せず「最後まで正常に終わった」ときだけ else が実行されます。探索の成否を簡潔に書けます。
target = "hanako"
names = ["taro", "jiro"]
for name in names:
if name == target:
print("見つかった")
break
else:
print("見つからなかった") # breakが無かったときだけ
例題で身につける（定番パターン）
例題1：合計・平均の計算
prices = [120, 340, 560]
total = 0
for p in prices:
total += p
avg = total / len(prices)
print(f"合計: {total} / 平均: {avg:.1f}")
例題2：フィルタと変換（条件付き処理）
data = ["120", "abc", "340", " 560 "]
clean = []
for s in data:
s = s.strip()
if not s.isdigit():
continue
clean.append(int(s))
print(clean) # [120, 340, 560]
例題3：二重ループでテーブル生成
for i in range(1, 4):
for j in range(1, 4):
print(f"{i}×{j}={i*j}")
例題4：辞書の集計
orders = [
{"item": "apple", "price": 120, "qty": 3},
{"item": "banana", "price": 90, "qty": 5},
]
total = 0
for o in orders:
total += o["price"] * o["qty"]
print(f"合計: {total} 円")
重要ポイントの深掘り（落とし穴とベストプラクティス）
ミュータブルを回しながら変更するときの注意
ループ対象をその場で変更すると、意図しないスキップや重複が起きます。必要なら「コピーを回す」か「新しいリストへ結果を書き出す」方式にします。
items = [1, 2, 3, 4]
for x in items[:]: # コピーで回す
if x % 2 == 0:
items.remove(x)
print(items) # [1, 3]
手動カウンタより enumerate
手で i += 1 するより enumerate が安全です。インデックスの開始値も指定できます。
range の終端は含まれない
range(a, b) は a から b-1 まで。境界値テストでズレを発見しやすくなります。
可読性を優先する
- 複雑な条件は事前に変数へ分解してから if に使う。
- 長い処理は関数化し、for の中では「要素→関数呼び出し」の形にする。
def score_label(s):
return "Good" if s >= 80 else "Try"
for s in [70, 85, 90]:
print(score_label(s))
まとめ
for ループは「並びの要素を順に処理する」ための核で、Pythonでは要素そのものを扱うため読みやすく安全です。range の半開区間、enumerate・zip の活用、break/continue/for-else の制御を押さえると、ほとんどの反復処理が過不足なく書けます。変更しながら回す場合の副作用に注意し、可読性を最優先に構造化する習慣をつければ、現場で通用するループが自然に書けるようになります。