概要
「A表とB表の両方に存在するコードだけ知りたい」
「2つのリストを突合して、“共通している値”を洗い出したい」
こういうときに役立つのが MATCH（マッチ）関数です。
MATCH は本来「範囲の中で何番目か」を返す関数ですが、
- 片方の表の値を
- もう片方の表で MATCH して
- 見つかったものだけを“両方に存在する値”として扱う
という使い方ができます。
ここでは、プログラミング初心者でも迷わないように
「考え方 → 基本形 → 抽出テクニック → 例題」という流れで解説します。
MATCH の基本
MATCH の書式と“何をしている関数か”
=MATCH(検索値, 検索範囲, [照合の種類])
検索値
どこにあるか探したい値（例：商品コード、社員番号）
検索範囲
どこから探すか（例：マスタ側のコードリスト）
照合の種類
0 を指定すると「完全一致」。
両方に存在するかを判定するときは、必ず 0 を使います。
例えば、B列にマスタのコードが並んでいて、
A2 のコードがマスタのどこにあるかを調べるときはこうです。
=MATCH(A2, $B$2:$B$100, 0)
- 見つかった場合 → 1,2,3…（範囲内での位置）
- 見つからない場合 →
#N/A
この「#N/A になったら片方にしか存在しない」という性質を使っていきます。
両方に存在するかどうかを TRUE/FALSE で判定する
A表のコードが B表にもあるかを判定する
前提：
A表（Sheet「A」）
A2:A100：商品コード
B表（Sheet「B」）
A2:A100：商品コード（マスタ）
A表の B2 に
「A2 のコードが B表にも存在するか？」を TRUE/FALSE で表示します。
=ISNUMBER(MATCH(A2, B!$A$2:$A$100, 0))
ポイントはここです。
- MATCH が数値（位置）を返したら → Bにも存在する → ISNUMBER → TRUE
- MATCH が
#N/Aなら → Bには存在しない → ISNUMBER → FALSE
これで「両方にある値だけ TRUE」という判定列が作れます。
両方に存在する値だけを“一覧として”取り出す
TRUE/FALSE 判定を作ったら、
FILTER 関数と組み合わせると「共通している値だけの一覧」が簡単にできます。
A表にも B表にもあるコード一覧を抽出
前提はさきほどと同じです。
A!A2:A100：A側のコード
B!A2:A100：B側のコード
別の場所（たとえば Aシートの D2）に、次の式を書きます。
=FILTER(A!A2:A100,
ISNUMBER(MATCH(A!A2:A100, B!$A$2:$A$100, 0)))
意味をかみ砕くと：
- MATCH(A!A2:A100, B!$A$2:$A$100, 0)
→ A側の各コードがB側のどこにあるか（位置 or#N/A） - ISNUMBER(…)
→ 見つかった行だけ TRUE（=両方に存在） - FILTER(元のA側コード, TRUE/FALSE)
→ TRUE の行だけを一覧で抽出
こうして、A表にもB表にも共通して存在する値だけが
ズラッとスピル表示されます。
共通データだけを“行ごと”取り出す
コードだけでなく、「その行の他の情報」もまとめて取りたいことが多いはずです。
共通コードの行を丸ごと抽出する
A表（Sheet「A」）
A列：商品コード
B列：商品名
C列：数量
B表（Sheet「B」）
A列：商品コード（マスタ）
A表の中から、「コードがB表にも存在する行だけ」を
行ごと抽出したい場合、Aシートの E2 に次の式を書きます。
=FILTER(A!A2:C100,
ISNUMBER(MATCH(A!A2:A100, B!$A$2:$A$100, 0)))
ポイント：
- FILTER の元データ範囲は A!A2:C100（コード＋他の列）
- 条件は A!A2:A100 に対して「Bに存在するか？」を MATCH で判定
これで、「A表とB表両方に存在するコードの行」だけが
コード・商品名・数量ごと抽出されます。
逆方向も同じ考え方でOK
今までは「A表側から見て、Bにもあるか？」でしたが、
逆に「B表側から見て、Aにもあるか？」も同じ考え方です。
B表から見て“Aにもある”コード一覧を出す
=FILTER(B!A2:A100,
ISNUMBER(MATCH(B!A2:A100, A!$A$2:$A$100, 0)))
両方に存在する値＝「どちらから見ても共通」なので、
必要に応じてどちら側から見るか決めればOKです。
よくあるつまずきとポイント
照合の種類は必ず 0（完全一致）
=MATCH(検索値, 検索範囲, 0)
ここを 1 や -1 にすると「近似一致」になり、
「本当は存在しないのに“ある扱い”」になることがあります。
両方に存在するかどうかの判定では、
照合の種類は必ず 0 にしてください。
検索範囲と元データの“表記揺れ”に注意
- 全角半角
- 前後のスペース
- 数字なのに文字列になっている
こういった違いがあると「見た目同じ」でも MATCH は一致と判定しません。
結果がおかしいと感じたら、セルの形式やスペースを疑ってください。
例題
問題1: Sheet「A」の A2:A100 に商品コード、Sheet「B」の A2:A100 に商品コードがあります。A2 のコードがBにも存在するかどうかを TRUE/FALSE で判定する式を、Aシートの B2 に書いてください。
=ISNUMBER(MATCH(A2, B!$A$2:$A$100, 0))
問題2: 問題1の式を使わずに、Aシートの A2:A100 の中から「Bシートにも存在するコードだけ」を一覧で C2 から表示する FILTER の式を書いてください。
=FILTER(A!A2:A100,
ISNUMBER(MATCH(A!A2:A100, B!$A$2:$A$100, 0)))
問題3: Sheet「A」の A2:C100 に「コード, 商品名, 数量」があります。Sheet「B」の A2:A100 にマスタのコードがあります。Aシートの中から、「Bシートにも存在するコードの行だけ」を行ごと抽出して E2 に表示する式を書いてください。
=FILTER(A!A2:C100,
ISNUMBER(MATCH(A!A2:A100, B!$A$2:$A$100, 0)))
問題4: Sheet「B」側から見て、「Aシートにも存在するコードだけ」を Bシートの C2 から一覧表示する式を書いてください（コードは B!A2:A100）。
=FILTER(B!A2:A100,
ISNUMBER(MATCH(B!A2:A100, A!$A$2:$A$100, 0)))
問題5: Aシートの A2 のコードが Bシートにも存在する場合は「共通」、存在しない場合は「片側のみ」と表示する式を、Aシートの B2 に書いてください。
=IF(ISNUMBER(MATCH(A2, B!$A$2:$A$100, 0)),
"共通",
"片側のみ")
まとめ
MATCH は本来「何番目か」を返す関数ですが、#N/A になる性質を利用すると、
- 片方にしかない値
- 両方に存在する値
を判定する“突合チェックのエンジン”として使えます。
型としては、次を覚えておくと便利です。
ISNUMBER(MATCH(値, 相手側リスト, 0)) ' 両方に存在するか判定
FILTER(リスト, ISNUMBER(MATCH(リスト, 相手側リスト, 0))) ' 共通リスト抽出
この2つの型が使えると、
「AとBの共通データだけ欲しい」「両方にあるコードだけ抽出したい」
といった実務の“突合系”の仕事が、一気に楽になります。