概要
VAR.Sは「標本データの分散」を求める関数です。標準偏差の二乗が分散であり、データのばらつきの大きさを数値化する指標です。母集団全体の分散を求めたい場合はVAR.Pを使います。VAR.Sは標本に基づく推定なので分母が n−1 になります。
基本の使い方
書式
=VAR.S(数値1, [数値2], …)
または範囲を指定して使います。
=VAR.S(範囲)
例
=VAR.S(B2:B21)
B2:B21のデータの分散を計算します。値が大きいほどデータの散らばりが大きいことを意味します。
具体例
テスト点数の分散
点数がB2:B21にある場合:
=VAR.S(B2:B21)
平均と比較すると「点数のばらつき」が分かります。
売上金額の分散
テーブル「売上」の列「金額」の分散:
=VAR.S(売上[金額])
売上の変動の大きさを数値で把握できます。
条件付き分散(カテゴリ別)
カテゴリがA列、金額がB列。現在行のカテゴリに属するデータの分散を求める:
=VAR.S(IF($A$2:$A$200=A2, $B$2:$B$200))
配列式が必要な環境ではCtrl+Shift+Enterで確定します。
応用テンプレート
月ごとの分散
日付A列、金額B列。A2と同じ月の金額の分散:
=VAR.S(IF(TEXT($A$2:$A$200,"yyyy-mm")=TEXT(A2,"yyyy-mm"), $B$2:$B$200))
平均と分散を併記して表示
="平均: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21),"0.00")&" / 分散: "&TEXT(VAR.S(B2:B21),"0.00")
標準偏差との関係
=STDEV.S(B2:B21)^2
標準偏差の二乗が分散になります。
よくあるつまずきと対策
VAR.SとVAR.Pの違い
- VAR.S: 標本分散(分母 n−1)
- VAR.P: 母集団分散(分母 n)
非数値や空白の扱い
文字列や空白は無視されますが、数値に見える文字列が混ざると計算漏れになることがあります。入力規則やVALUE関数で統一しましょう。
外れ値の影響
分散は外れ値に敏感です。異常値がある場合は除外ルールを定めるか、中央値や四分位範囲も併用して確認します。
練習問題
問題1: 列B(B2:B21)の分散をC2に表示してください
解答例:
=VAR.S(B2:B21)
問題2: テーブル「売上」の列「金額」の分散をセルH2に表示してください
解答例:
=VAR.S(売上[金額])
問題3: カテゴリA列、金額B列。現在行(A2)のカテゴリに属する金額の分散をC2に表示してください
解答例:
=VAR.S(IF($A$2:$A$200=A2, $B$2:$B$200))
問題4: 日付A列、金額B列。A2の日付と同じ月の金額の分散をC2に表示してください
解答例:
=VAR.S(IF(TEXT($A$2:$A$200,"yyyy-mm")=TEXT(A2,"yyyy-mm"), $B$2:$B$200))
問題5: 平均と分散を併記して「平均: ○○ / 分散: ○○」とD2に表示してください
解答例:
="平均: "&TEXT(AVERAGE(B2:B21),"0.00")&" / 分散: "&TEXT(VAR.S(B2:B21),"0.00")
まとめ
- VAR.Sは標本分散を求める関数で、データの散らばりを数値化できる。
- 母集団全体ならVAR.Pを使う。
- 標準偏差の二乗が分散。
- 条件付き集計はIFと組み合わせると柔軟に対応可能。
- 外れ値やデータ型の混在に注意し、平均とセットで解釈すると理解しやすい。
