概要
Excel で数式をコピーしたときに、参照セルが勝手にズレて困った経験はありませんか。
そんなときに使うのが $(ドル記号)=絶対参照 です。
$ を付けることで、
「行だけ固定」「列だけ固定」「行列どちらも固定」
といった“参照範囲の固定”が自由にできます。
初心者が最初につまずくポイントでもあるので、
ここでは 仕組み → 使い方 → 実務テンプレート → 例題 の順で丁寧に解説します。
絶対参照($)の基本
参照の種類と意味
| 記述 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| A1 | 相対参照 | コピーすると行・列が変わる |
| $A$1 | 絶対参照 | 行も列も固定 |
| A$1 | 行固定 | 行だけ固定、列は動く |
| $A1 | 列固定 | 列だけ固定、行は動く |
最もよく使うのは $A$1(行列どちらも固定) です。
参照がズレる仕組み(相対参照)
例えば、次の式を F2 に入れたとします。
=A2 * D2
これを F3 にコピーすると、Excel は自動でこう変えます。
=A3 * D3
これが 相対参照。
「コピー先に合わせて参照先もズラす」という Excel の基本動作です。
便利な反面、
「常に同じセルを参照したい」
という場面では困ります。
参照を固定する(絶対参照)
行列どちらも固定したい → $A
=$A$1
どこにコピーしても A1 を参照し続けます。
列だけ固定したい → $A1
=$A1
横にコピーしても列Aのまま。
縦にコピーすると行番号だけ変わります。
行だけ固定したい → A
=A$1
縦にコピーしても行1のまま。
横にコピーすると列だけ変わります。
実務でよく使うパターン
1. 価格 × 税率(税率セルを固定)
E1 に税率(例:0.1)が入っているとします。
F2 に次の式を入れると:
=D2 * $E$1
これを下にコピーしても、常に E1 の税率を参照します。
2. VLOOKUP / XLOOKUP の範囲を固定
検索範囲は絶対参照にするのが基本です。
=VLOOKUP(E2, $A$2:$C$100, 2, FALSE)
=XLOOKUP(E2, $A$2:$A$100, $B$2:$B$100)
範囲がズレる事故を防げます。
3. 表の「行だけ固定」「列だけ固定」
行固定(A$1)や列固定($A1)は、
掛け算表・料金表・シフト表などでよく使います。
例:掛け算表
行に「1,2,3…」
列に「1,2,3…」
=$A2 * B$1
- $A2 → 列Aを固定
- B$1 → 行1を固定
コピーしても正しい掛け算表が作れます。
よくあるつまずきと対策
$ を付け忘れて範囲がズレる
VLOOKUP や XLOOKUP の範囲は必ず固定しましょう。
NG:
=VLOOKUP(E2, A2:C100, 2, FALSE)
コピーすると A3:C101 などにズレます。
OK:
=VLOOKUP(E2, $A$2:$C$100, 2, FALSE)
F4キーで簡単に切り替えられる
セル参照を選択した状態で F4キー を押すと、
A1 → $A$1 → A$1 → $A1 → A1(ループ)
と切り替わります。
絶対参照と相対参照を混ぜると強力
- 行だけ固定(A$1)
- 列だけ固定($A1)
を使いこなすと、表作成のスピードが一気に上がります。
例題
問題1: D2 に「価格」、E1 に「税率」が入っています。F2 に「税込価格(価格×税率)」を計算し、下にコピーしても税率セルがズレないように式を書いてください。
=D2 * $E$1
問題2: A2:C100 が商品マスタです。E2 の商品コードに対応する商品名を F2 に表示する VLOOKUP を書き、範囲がズレないように固定してください。
=VLOOKUP(E2, $A$2:$C$100, 2, FALSE)
問題3: 掛け算表を作ります。A列に「1〜10」、1行目に「1〜10」が入っています。B2 に「行×列」を計算する式を書き、行と列を適切に固定してください。
=$A2 * B$1
問題4: XLOOKUP で、E2 の商品コードに対応する商品名を F2 に表示します。検索範囲と戻り範囲を固定した式を書いてください。
=XLOOKUP(E2, $A$2:$A$100, $B$2:$B$100)
問題5: A1:E1 に項目名、A2:E100 にデータがあります。G1 に項目名、G2 に行番号が入っているとき、「G1 の列の G2 行目」を返す INDEX+MATCH を書き、範囲を固定してください。
=INDEX($A$2:$E$100, G2-1, MATCH(G1, $A$1:$E$1, 0))
まとめ
参照範囲を固定する $ は、Excel の基礎でありながら最重要テクニックです。
- $A$1 → 行列どちらも固定
- A$1 → 行だけ固定
- $A1 → 列だけ固定
- F4キーで簡単切り替え
- 検索範囲・税率・定数セルは必ず固定
このルールを押さえるだけで、
数式の安定性が劇的に上がり、コピー時のトラブルがほぼ消えます。
次のステップとして、
「どこを固定すべきか」を意識しながら数式を作る練習をしてみてください。
