概要
「最大値がどこにあるか（位置）」を求める定番式が MATCH(MAX(範囲), 範囲, 0) です。内側の MAX(範囲) で最大値を取り、その値が範囲の中の何番目かを MATCH(..., 範囲, 0) で突き止めます。返り値は「範囲内のインデックス（1始まり）」で、行番号や列番号に変換したり、INDEXで値や関連情報を取り出すのに使えます。
基本の使い方
書式
=MATCH(MAX(範囲), 範囲, 0)
MAX(範囲): 最大値を取得MATCH(検索値, 検索範囲, 検索の種類): 位置を取得（検索の種類は完全一致なら0）
最小例
=MATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0)
B2:B20の最大値が「範囲の何番目か」を返します（B2が1、B3が2…）。
具体例
行番号を得たい（シート上の行番号に変換）
=ROW(B2) - 1 + MATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0)
B2の行番号を基準に「オフセット」を足して、シート上の絶対行番号を返します。
最大値の“行の別列情報”を取り出す（INDEXと組み合わせ）
=INDEX(A2:A20, MATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0))
B列の最大値の行にあるA列の値（例: 商品名）を取得します。
テーブル（構造化参照）で見やすく
テーブル名「売上」、金額列「金額」、商品列「商品」:
=INDEX(売上[商品], MATCH(MAX(売上[金額]), 売上[金額], 0))
最大金額の商品の名前を返します。
応用テンプレート
列全体の最大値位置（列番号に変換）
横方向（1行内）の最大値の“列位置”を求める:
=MATCH(MAX(2:2), 2:2, 0)
行2の中で最大値がある列の「インデックス」（左端から1,2,3…）を返します。シート上の列番号にしたい場合は COLUMN(A1)-1+... を同様に加算します。
2次元の最大値の“行と列”を同時に特定
行はB2:F20、列はB:Fに揃っているとき:
- 行インデックス
=MATCH(MAX(B2:F20), INDEX(B2:F20, 0, MATCH(MAX(B2:F20), B2:F20, 0)), 0)
実務では、まず「最大値そのもの」を探し、その値が含まれる行・列を段階的に特定するより、次のように分けて求めるのが確実です。
- 行番号
=MIN(IF(MAX(B2:F20)=B2:B20, ROW(B2:B20)))
- 列番号
=MIN(IF(MAX(B2:F20)=B2:F2, COLUMN(B2:F2)))
Microsoft 365なら LET と XLOOKUP/XMATCH を使うと読みやすく書けます。
複数の最大値がある場合（最初の1つ以外も列挙）
最大値に一致する“すべての位置”を返す（Microsoft 365の動的配列）:
=FILTER(ROW(B2:B20), B2:B20=MAX(B2:B20))
行番号の配列が返り、複数箇所の最大値を一覧にできます。テーブルなら FILTER(売上[商品], 売上[金額]=MAX(売上[金額])) で最大金額の商品を複数返します。
最大値が複数でも“最後のもの”を取りたい（最後の一致）
XMATCHが使える環境なら「最後の一致」を指定できます:
=XMATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0, -1)
-1は「最後の一致」を意味します。
よくあるつまずきと対策
同率（同じ最大値）が複数ある
MATCH は最初に見つかった位置を返します。全件列挙したいなら FILTER を使うか、古いExcelでは配列数式で IF と SMALL を組み合わせて複数位置を取り出します。
数値に見える文字列が混ざっている
MAX はテキストを無視します。数値が文字列で入っていると正しく比較されません。入力規則の整備か、別列で =VALUE(セル) などで正規化してから使います。
範囲と基準の不一致
MATCH(MAX(範囲), 範囲, 0) の「範囲」は内外で必ず一致させます。違う範囲を混ぜると位置がずれます。
空白やエラーを含む
空白は問題ありませんが、エラー値が混ざると MAX や MATCH がエラーになります。データ側で IFERROR で保護するか、計算用列でエラーを排除してから参照します。
例題
問題1: 列B（B2:B20）の最大値の“範囲内位置”をC2に表示
解答例:
=MATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0)
問題2: 列Bの最大値の“行の商品名（A列）”をD2に表示
解答例:
=INDEX(A2:A20, MATCH(MAX(B2:B20), B2:B20, 0))
問題3: テーブル「売上」で最大金額の“レコードの顧客名（顧客列）”をH2に表示
解答例:
=INDEX(売上[顧客], MATCH(MAX(売上[金額]), 売上[金額], 0))
問題4: 行2（B2:F2）の中で最大値がある“列インデックス”をG2に表示
解答例:
=MATCH(MAX(B2:F2), B2:F2, 0)
問題5: 列Bの最大値が複数あるとき、その“すべての行番号”をI2から縦に出力（Microsoft 365）
解答例:
=FILTER(ROW(B2:B20), B2:B20=MAX(B2:B20))
まとめ
MATCH(MAX(範囲), 範囲, 0) は「最大値の位置」を最短で取得する定番式です。位置が分かれば INDEX と組み合わせて関連情報も取り出せます。複数最大値への対応や“最後の一致”は FILTER や XMATCH が便利です。範囲の整合、データ型の統一、エラー値の除去を意識すれば、実務で堅牢に使えます。