初心者向け：インクリメント・デクリメントの基本
数値を「1だけ増やす／減らす」ための専用演算子がインクリメント（++）とデクリメント（–）です。カウンタやループでよく使います。
演算子の種類と基本動作
- インクリメント（++）: 値を 1 増やす
let x = 5;
x++; // x は 6
++x; // x は 7
- デクリメント（–）: 値を 1 減らす
let y = 5;
y--; // y は 4
--y; // y は 3
ポイント: どちらも「再代入」が起きるため、定数（const）では使えません。let で宣言した変数に使います。
前置（++i / –i）と後置（i++ / i–）の違い
- 後置: 式の評価「後」に値が変わる（元の値を返す）
let a = 10;
const r1 = a++; // r1 = 10（返り値は増やす前の値）、a は 11
- 前置: 式の評価「前」に値が変わる（更新後の値を返す）
let b = 10;
const r2 = ++b; // r2 = 11（返り値は増やした後の値）、b は 11
- 比較例（重要な違い）:
let i = 0;
while (i++ < 3) {
// ループ内での i は 1, 2, 3
}
let j = 0;
while (++j < 3) {
// ループ内での j は 1, 2
}
結論: 返り値を使う複雑な式では誤解が起きやすい。読みやすさ重視なら
i += 1やi = i + 1を使うと安全。
代替表現と実用パターン
- 同じ意味の別書き
i++; // i = i + 1 と同じ
i--; // i = i - 1 と同じ
i += 1; // 読みやすく安全（返り値の混乱がない）
i -= 1;
- for ループの定番
for (let i = 0; i < 5; i++) {
console.log(i); // 0,1,2,3,4
}
- カウンタの更新（条件分岐と組み合わせ）
let success = 0, fail = 0;
const results = [true, false, true];
for (const ok of results) {
ok ? success++ : fail++;
}
よくあるつまずきと注意点
- 副作用のある返り値:
arr[i++]など「読み取りと更新を同時に行う」書き方は誤読の原因。分けて書くと安全。
const value = arr[i];
i++;
- const には使えない: 再代入が必要なため、
const変数に対して++や--はエラー。 - 数値以外への適用: 文字列や boolean に使うと数値へ暗黙変換されるが、意図しない結果になりがち。必ず数値だけに使う。
let s = "5";
s++; // s は 6（文字列が数値化される）。混乱のもと
- NaN のまま: 数値化できない値に使うと NaN になる。
let t = "foo";
t++; // t は NaN
- BigInt は別物: BigInt でも
++は使えるが、Number と混在させない。
let n = 10n;
n++; // 11n
使い分けの指針
- 返り値を使わず「1増やすだけ」なら
i++で簡潔に。 - 式の中で返り値が必要なら「前置／後置の違い」を明確に理解するか、
i += 1に切り替える。 - チームや学習段階では「更新は別文で書く」ルールにすると読みやすさが上がる。
ミニ練習
- 問1: 変数
iを 0 で初期化し、3回インクリメントして最終値を表示せよ。
let i = 0;
i++; i++; i++;
console.log(i); // 3
- 問2:
let a = 5;から、前置と後置の返り値の違いを確認せよ。
let a = 5;
const r1 = a++; // r1 = 5, a = 6
const r2 = ++a; // r2 = 7, a = 7
console.log(r1, r2, a);
- 問3: 配列の全要素を順に表示するが、インデックス更新は「別文」で安全に記述せよ。
const arr = ["a", "b", "c"];
let idx = 0;
while (idx < arr.length) {
console.log(arr[idx]);
idx += 1; // または idx++
}
- 問4:
const cnt = 0;に対してcnt++を実行すると何が起こるか考え、正しい書き方に直せ。
// cnt++ は TypeError（const は再代入不可）
let cnt = 0;
cnt++; // OK
まとめ
- ++ は 1増、– は 1減。返り値のタイミングで前置／後置が異なる。
- 読みやすさ優先なら
i += 1や更新を別文に分ける。 - const や非数値には使わない。暗黙変換や NaN を避ける。
- ループやカウンタで頻出。基本だが、返り値の違いを正しく理解するとバグを防げる。