概要
BigIntは桁数が非常に大きい整数を扱う型（末尾にnを付ける）。- 普通の
Number（浮動小数）とは自動で混ざらない（混ぜるとエラーになる）。必ず明示的に変換する。
1. 作り方（BigInt の生成）
const a = 123n; // リテラル（推奨）
const b = BigInt("9007199254740992"); // 文字列から
const c = BigInt(123); // Number（整数ならOK）
nを付けた整数リテラルが最も簡単。BigInt()に Number を渡すなら整数でないと RangeErrorになる（例：BigInt(123.3)はエラー）。
2. 算術（+ – * % ** /）── 普通に使えるが注意点あり
10n + 5n // → 15n
10n - 3n // → 7n
3n * 4n // → 12n
7n % 3n // → 1n
2n ** 10n // → 1024n
- 割り算
/は小数を返さない（商を整数に切り捨てる・ゼロに向かって切る）。例：7n / 3n→2n。小数が必要なら別処理が必要。
小数が欲しいときの一例
// 精度を自分で決めて計算する（例：小数2桁）
const a = 7n, b = 3n;
const decimal2 = Number(a * 100n / b) / 100; // -> 2.33
（上の例は BigInt 同士で割ってから Number に変換して小数を得る手法）
3. BigInt と Number を混ぜるとエラーになる（重要）
1n + 2 // TypeError: cannot mix BigInt and other types
0 + 1n // TypeError
- 演算子に BigInt と Number を混ぜると（JS は）暗黙の変換を行わないため TypeError になる。必ず片方を明示的に変換してから演算する。
変換の例
// Number -> BigInt（整数であることを確認）
const n = 5;
if (Number.isInteger(n)) {
const r = BigInt(n) + 10n; // OK
}
// BigInt -> Number（精度が失われる可能性あり）
const big = 9007199254740991n;
const num = Number(big); // 失われる可能性あり（注意）
BigInt() は整数以外を渡すと例外になる、Number(big) は明示的な変換で失われる精度に注意、という使い分けです。
4. 単項演算子（+、−）と ++/–
-（単項マイナス）は BigInt に使える：-15n→-15n。+（単項プラス）は BigInt に使えない（+1nは TypeError）。
let x = 15n;
x++; // → 16n （インクリメント OK）
--x; // → 15n
+15n; // TypeError: Cannot convert a BigInt value to a number
5. ビット演算・シフト
&,|,^,~,<<,>>は BigInt に対して使える（ビット演算の扱いは BigInt 用に定義されている）。- 符号なし右シフト
>>>は BigInt では使えない（エラー）。
（※ビット演算を使う際は BigInt 同士で使うこと）
例：
(5n & 3n) // -> 1n
(1n << 4n) // -> 16n
6. 比較（<, >, <=, >=, ==, ===）
<, >, <=, >=は BigInt と Number を混ぜても「数学的な値」で比較できる（3n > 2→ true）。==は型変換を行うので0n == 0はtrue。===は型も比較するため0n === 0はfalse。
54 == 54n // true
54 === 54n // false
3n > 2 // true
7. JSON / シリアライズの罠
JSON.stringifyに BigInt を直接渡すとエラー（シリアライズできない）。そのまま送れないので、文字列に変換するか replacer を使う必要がある。
例（replacer を使う）：
const obj = { id: 123n, name: "Alice" };
const json = JSON.stringify(obj, (_, v) => typeof v === "bigint" ? v.toString() : v);
// -> '{"id":"123","name":"Alice"}'
復元するときは BigInt(parsed.id) のように戻す必要があります。
8. よくあるハマりどころ（まとめ）
- Number と混ぜて計算しようとして TypeError → 明示的に変換する。
- 割り算で小数が切り捨てられる → 必要なら別の方式で小数を再現する（分子を拡大して計算する等）。
+（単項プラス）で TypeError →Number(big)など明示変換を使う。- JSON に突っ込めない →
toString()するか replacer を使う。 - BigInt(浮動小数) はエラー →
BigInt(123.3)はRangeError。整数であることを確認してから変換。
9. 実用的なヘルパー（安全に混ぜたいときの簡単な例）
// Number (整数) を安全に BigInt に変換する
function toBigIntSafe(x) {
if (typeof x === "bigint") return x;
if (typeof x === "number" && Number.isInteger(x)) return BigInt(x);
throw new TypeError("toBigIntSafe: integer Number or BigInt required");
}
// BigInt演算推奨：Number を使うなら明示的に変換する
function addAsBigInt(a, b) {
return toBigIntSafe(a) + toBigIntSafe(b);
}
// BigInt -> Number（注意：精度喪失の可能性）
function toNumberSafe(b) {
if (typeof b !== "bigint") return b;
const n = Number(b);
// 必要なら安全範囲チェック
if (Math.abs(n) > Number.MAX_SAFE_INTEGER) {
console.warn("精度喪失の可能性あり");
}
return n;
}
- ヘルパーで「何を許すか」を明確にしておくとコードのバグが減ります。
10. いつ BigInt を使うべきか（実務の基準）
Number.MAX_SAFE_INTEGER（約 9e15）を超える可能性がある整数 を扱うなら BigInt を検討。- お金の細かい小数計算（通貨）は BigInt より Decimal ライブラリ／整数（最小単位＝セント）を用いるほうが扱いやすい（例：セント単位を
BigIntにする）。 - 小さな計算や Math 関数（
Math.sqrt等）はNumberのままの方が便利（Mathは BigInt を受け取らない）。
