list.pop の概要（要素を取り出しつつ削除する）
list.pop は、リストから要素を取り出して同時に削除するメソッドです。戻り値として「取り出した要素」を返します。引数を省略すると末尾の要素、インデックスを渡すとその位置の要素が対象になります。元のリストが直接変更されるインプレース操作です。
fruits = ["apple", "banana", "orange"]
last = fruits.pop()
print(last) # "orange"
print(fruits) # ["apple", "banana"]
基本動作と引数（ここが重要）
省略時は末尾、指定時はその位置
pop() はデフォルトで末尾を削除して返します。位置を指定したい場合は整数インデックスを渡します。
nums = [10, 20, 30, 40]
x = nums.pop() # 末尾 40
y = nums.pop(1) # インデックス1 → 20
print(x, y) # 40 20
print(nums) # [10, 30]
負のインデックスも使える
末尾基準で位置を指定できます。-1 は末尾、-2 は末尾から2番目です。
letters = ["A", "B", "C", "D"]
print(letters.pop(-2)) # "C"
print(letters) # ["A", "B", "D"]
空リストに対してはエラー
対象要素がないため IndexError が発生します。事前に長さを確認するか、条件分岐で安全に扱います。
items = []
# items.pop() # IndexError
if items:
items.pop()
remove・del との違い（重要ポイントを深掘り）
値で消すか、位置で消すか、返すか
- remove(value): 最初に一致した「値」を削除。戻り値なし（None）。
- pop(index=None): 「位置」の要素を削除して、その値を返す。
- del リスト[index]: 「位置」の要素を削除。戻り値なし（文）。
「取り出した値を次の処理で使いたい」なら pop が最適です。「値指定で消したい」なら remove、「返り値不要の一括削除」やスライス削除は del が簡潔です。
items = ["a", "b", "c", "b"]
v = items.pop(1) # 位置指定で削除して返す → "b"
# items.remove("b") # 値指定で削除（先頭の"b"）。返り値なし
# del items[0] # 位置指定で削除。返り値なし
実務での使いどころ（スタック・キュー・クレンジング）
スタック（後入れ先出し）の取り出し
末尾へ append、取り出しは pop。直感的で高速です。
stack = []
stack.append("task1")
stack.append("task2")
print(stack.pop()) # "task2"
print(stack) # ["task1"]
取り出した値を使った処理
「削除しつつ、その値で集計・判定」などが1行で書けます。
nums = [1, 5, 10]
total = 0
while nums:
total += nums.pop()
print(total) # 16
キュー（先頭取り出し）は注意
先頭の pop(0) は全要素のシフトが発生して遅くなりがちです。頻繁な先頭取り出しは collections.deque を使うと効率的です。
from collections import deque
q = deque(["a", "b", "c"])
print(q.popleft()) # "a"（高速）
重要ポイントの深掘り（性能と安全性）
計算量の違い
- 末尾の pop(): 平均してほぼ O(1) で高速。
- 中間や先頭の pop(i): 後ろの要素を前へ詰めるため O(n)。大量データで多用すると遅くなります。
用途に応じて「末尾中心」に設計する、先頭利用は deque に切り替えるなどの工夫が有効です。
戻り値の活用と誤用防止
pop は「削除した値」を返します。None ではないため、即座に使えます。一方、remove や del は戻り値がないので、値が必要なら pop を選びます。削除後のリスト状態を前提とする処理は、pop の直後に書くと意図が明確です。
エラー対策（空と範囲）
空リストや範囲外インデックスは IndexError になります。防ぐには「条件で存在チェック」「try/except で補足」「業務ロジック上の不変条件（空にしない）」のいずれかで設計します。
try:
value = items.pop(5)
except IndexError:
value = None
例題で身につける（定番から一歩先まで）
例題1：ログの最新を取り出して処理
logs = ["start", "load", "run", "finish"]
last = logs.pop()
print(last) # "finish"
print(logs) # ["start", "load", "run"]
例題2：先頭を取り出すが、回数が少ない場合
names = ["A", "B", "C"]
first = names.pop(0) # 先頭取り出し（少量なら許容）
print(first, names) # "A" ["B", "C"]
例題3：値を取り出しつつ合計・最大を更新
nums = [7, 3, 12, 5]
total = 0
max_v = float("-inf")
while nums:
v = nums.pop()
total += v
if v > max_v:
max_v = v
print(total, max_v) # 27 12
例題4：取り出した値で分岐（在庫処理）
stocks = [("coffee", 2), ("tea", 1)]
item, qty = stocks.pop()
print(item, qty) # "tea" 1
# 取り出した在庫を出荷処理へ渡す…など
まとめ
list.pop は「位置で削除して、その値を返す」インプレース操作で、末尾なら高速、先頭や中間は O(n) のコストがかかります。値を使いながら削除する場面（スタック、集計、分岐）に強く、remove（値指定・戻り値なし）や del（文・戻り値なし）と明確に使い分けるのがポイントです。空リストや範囲外では IndexError になるため、事前チェックや例外処理で安全に。頻繁な先頭取り出しは deque へ切り替える設計にすると、規模が大きくなっても安定して動きます。