概要（open は「ファイルを開いて読み書きする入口」）
open() はファイルを開いて「ファイルオブジェクト」を返す組み込み関数です。読み込み、書き込み、追記、バイナリ操作までこれ一つで行えます。重要なのはモード（r, w, a, x, r+, b, t）とエンコーディング（encoding）を正しく選ぶこと、そして with 文で「自動で閉じる」習慣を持つことです。
# テキスト読み込み（UTF-8）
with open("notes.txt", "r", encoding="utf-8") as f:
text = f.read()
# テキスト書き込み（上書き）
with open("out.txt", "w", encoding="utf-8") as f:
f.write("こんにちは\n")
基本の使い方とモード（ここが重要）
読み込み（r）・書き込み（w）・追記（a）・新規作成（x）
- r: 既存ファイルを読み込み。無ければエラー。
- w: 新規作成または上書き。既存内容は消える。
- a: 末尾に追記。既存内容は保持。
- x: 新規作成のみ。既存ならエラー。
- r+: 読み書き両用（位置管理に注意）。
# 追記
with open("log.txt", "a", encoding="utf-8") as f:
f.write("started\n")
テキスト（t）とバイナリ（b）、エンコーディング
- t（既定）: 文字列で入出力。encoding が効く（例: “utf-8″）。
- b: bytes で入出力。画像や圧縮ファイル、実行ファイルなどに使う。
# 画像コピー（バイナリ）
with open("in.png", "rb") as src, open("out.png", "wb") as dst:
dst.write(src.read())
with 文で必ず「閉じる」を自動化
ファイルは開いたら必ず閉じる必要があります。with 文ならエラーが起きても自動で close され、リソースリークを防げます。これは厳守の基本ルールです。
with open("data.txt", "r", encoding="utf-8") as f:
for line in f:
print(line.rstrip())
読み書きの具体テクニック（読み方・書き方・位置移動）
読み込みの3パターン（read, readline, 反復）
- read(): 全部を文字列で取得（大きいファイルは注意）。
- readline(): 1行だけ取得（末尾で空文字）。
- for 行 in f: 行単位で効率的に反復。実務の定番。
# 行ごとの処理が安全で高速
with open("large.csv", "r", encoding="utf-8") as f:
for line in f:
cols = line.strip().split(",")
書き込み（write, writelines）と改行の扱い
- write(s): 文字列を書き込む。自動改行はしないので “\n” を明示。
- writelines(list[str]): 複数行まとめ書き（改行は自分で付ける）。
rows = ["a,1", "b,2"]
with open("out.csv", "w", encoding="utf-8") as f:
f.writelines(r + "\n" for r in rows)
ファイル位置の移動（seek/tell）で部分読み書き
- tell(): 現在位置（バイトオフセット）を返す。
- seek(offset, whence): 位置を移動（0: 先頭基準、1: 現在基準、2: 末尾基準）。
with open("nums.txt", "r+", encoding="utf-8") as f:
f.seek(0, 2) # 末尾へ
f.write("\n42")
エンコーディング・改行・バッファ（重要ポイントの深掘り）
encoding を必ず明示（実務では UTF-8 が基本）
環境依存の既定エンコーディングは事故のもとです。テキストは原則 “utf-8” を明示。文字化けや例外（UnicodeDecodeError/EncodeError）を避けられます。
with open("jp.txt", "r", encoding="utf-8") as f:
text = f.read()
改行（newline）とプラットフォーム差
Windows は “\r\n”、UNIX は “\n”。テキストモードは通常「万能改行」扱いで自動変換します。均一化したいなら newline=”\n” を指定すると入出力を統一できます。
with open("log.txt", "w", encoding="utf-8", newline="\n") as f:
f.write("ok\n")
バッファと flush
書き込みはバッファに溜まってからディスクへ。すぐ保存したいときは f.flush()、または open(…, buffering=1) や print(…, flush=True) を使います。頻繁な flush は性能に影響するため必要時のみ。
エラー対策と安全設計（存在確認・例外・排他）
ファイルの存在・パスの安全な取り扱い
存在確認は pathlib.Path を使うと安全で直感的です。親ディレクトリの作成も簡単に行えます。
from pathlib import Path
p = Path("data/output.txt")
p.parent.mkdir(parents=True, exist_ok=True)
with p.open("w", encoding="utf-8") as f:
f.write("ready")
例外の扱い（FileNotFoundError, PermissionError など）
入出力は外部要因で失敗します。必要なら try/except を添えて、ユーザー向けに分かりやすいメッセージを返しましょう。
from pathlib import Path
def read_text_safe(path: str) -> str | None:
try:
return Path(path).read_text(encoding="utf-8")
except FileNotFoundError:
return None
新規作成（x）で「誤上書き」を防ぐ
x モードなら既存ファイルを安全に守れます。ログ・レポート・成果物の重複生成対策に有効です。
try:
with open("report.txt", "x", encoding="utf-8") as f:
f.write("new report")
except FileExistsError:
print("既に存在します")
実践例（定番から一歩先まで）
例題1：設定ファイルの読み込み（行ごと）
def load_kv(path: str) -> dict[str, str]:
kv = {}
with open(path, "r", encoding="utf-8") as f:
for line in f:
line = line.strip()
if not line or line.startswith("#"):
continue
k, v = line.split("=", 1)
kv[k.strip()] = v.strip()
return kv
例題2：CSV を安全に書き出す（改行統一）
rows = [["name", "qty"], ["coffee", 2], ["tea", 1]]
with open("stock.csv", "w", encoding="utf-8", newline="\n") as f:
for r in rows:
f.write(",".join(map(str, r)) + "\n")
例題3：巨大ファイルの部分読み（ seek/tell ）
def read_tail(path: str, last_bytes: int = 1024) -> bytes:
with open(path, "rb") as f:
f.seek(-last_bytes, 2) # 末尾から
return f.read()
例題4：JSON 保存と読み込み（エンコーディング明示）
import json
data = {"items": ["coffee", "tea"], "qty": 3}
with open("data.json", "w", encoding="utf-8") as f:
json.dump(data, f, ensure_ascii=False, indent=2)
with open("data.json", "r", encoding="utf-8") as f:
loaded = json.load(f)
まとめ
open() は「ファイルを開く入口」で、モードとエンコーディングの選択、with 文による自動クローズが三大要点です。読み込みは行反復が基本、書き込みは改行を明示、位置移動（seek/tell）で部分処理も可能。改行のプラットフォーム差は newline でコントロールし、例外対策・存在確認は pathlib を併用して安全に。これらを押さえるだけで、初心者のファイル操作は一気に安定し、実務で通用する品質に届きます。
