概要(help は「その場で公式説明を表示する」学習の最強の入口)
help() は、関数・クラス・モジュールなどの「公式説明(docstring)」を即座に表示する組み込み関数です。Web検索に行かなくても、その場で使い方・引数・戻り値・注意点にアクセスできます。初心者ほど「わからない→help→試す」を回すと理解が速く、迷いが減ります。
help(len) # 組み込み関数の説明
import math
help(math) # モジュールの概要と中身
from datetime import datetime
help(datetime) # クラスの説明と主要メソッド
Python基本の使い方(ここが重要)
help(対象) で「対象の説明」を表示する
関数、クラス、メソッド、モジュールなどをそのまま渡します。要点は「対象を値として渡す」こと。文字列ではなく実体(len, math.sqrt など)を渡すと正しく表示されます。
help(print) # print の引数(sep, end, file など)が分かる
import math
help(math.sqrt) # sqrt の仕様(引数・戻り値)だけに絞って読める
Python引数なしの help() は「対話型ヘルプ」を起動する
help() とだけ打つと、対話型のヘルプ画面が立ち上がります。ここで名前を入力していくつも説明を連続で閲覧できます。終了は q などの指示に従います。
help() # 起動後に "len" や "math" と入力していく
Pythondocstring(ドキュメンテーション文字列)を表示する
help() が表示しているのは、対象に書かれた docstring です。自分で書いた関数にも docstring を付ければ、help に載る“自己説明”の関数になります。
def divide(a: float, b: float) -> float:
"""a を b で割って返す。b が 0 の場合は ZeroDivisionError。"""
return a / b
help(divide) # 自作関数でも説明が出る
Python読み方のコツ(重要ポイントを深掘り)
最初の1行の「要約」を押さえる
help の最初の1行は、その対象が何者か(built-in function / class / module など)と、主な役割の要約です。まずここで方向性を掴み、引数や注意点の詳細へ進みます。
引数シグネチャを見る(位置・キーワード・デフォルト)
表示される関数のシグネチャで、位置引数・キーワード引数・デフォルト値が分かります。初心者は「省略可能か」「キーワード指定が必要か」を最優先で確認しましょう。
help(round)
# round(number[, ndigits]) のような表記から、ndigits が省略可能と分かる
Python例外・副作用・注意書きに目を通す
失敗時の例外(例:ValueError、TypeError)や、ファイル書き込み・標準出力などの副作用、精度の注意などは help に書かれています。ここを先読みすると、デバッグが一気に楽になります。
実践の流れ(dir → help → 試す を小さく回す)
dir で「何があるか」を一覧し、help で深掘り
初めてのモジュールは、まず dir で名前をざっと見て、使いそうなものを help で詳しく読むのが近道です。
import math
print("sqrt" in dir(math))
help(math.sqrt)
Python気になったメソッドを即試す(REPL で小さく検証)
REPL(対話モード)やノートブックで、見たばかりの関数を小さな入力で試します。help で読んだ内容を「手で確かめる」ことで、記憶と理解が定着します。
from pathlib import Path
help(Path)
p = Path("data") / "input.csv"
print(p.exists())
Pythonよくあるつまずきと対策
文字列を渡しても助けてくれないことがある
help(“len”) のように文字列を渡すより、help(len) のように“実体”を渡すほうが確実です。モジュール名も import 済みのオブジェクトを渡しましょう。
import json
help(json) # OK
# help("json") # 環境によっては出ないことがある
Pythonサードパーティライブラリは docstring の質がまちまち
外部ライブラリでは、docstring が簡素な場合があります。そのときは公式ドキュメントやソースを補助的に参照します。標準ライブラリは比較的充実しています。
ヘルプ表示が長いときは検索や絞り込みを意識する
表示が長い場合は “find” で探す(ターミナルやエディタの検索機能)か、対象を絞って help する(例:help(datetime) ではなく help(datetime.strptime))と読みやすくなります。
例題で身につける(定番から一歩先まで)
例題1:組み込み関数の仕様を確認
help(len)
# 何に対して長さが取れるか、戻り値の型、注意点が分かる
Python例題2:モジュールと特定関数の違いを読む
import math
help(math) # 概要と包含関数の説明
help(math.hypot) # 2次元ベクトル長の仕様をピンポイントで
Python例題3:クラスのコンストラクタとメソッドを確認
from datetime import datetime
help(datetime) # クラス全体像
help(datetime.strptime) # 文字列→日時の変換メソッド
print(datetime.strptime("2025-12-13", "%Y-%m-%d"))
Python例題4:自作関数の docstring を help で確認
def slugify(text: str) -> str:
"""見出し文字列をURL用スラッグに変換する。
前後空白を除去し、小文字化し、空白をハイフンに置換する。
"""
s = text.strip().casefold()
return "-".join(s.split())
help(slugify)
Pythonまとめ
help() は「その場で公式説明を呼び出す」ための入口です。対象の実体を渡し、最初の1行で要点を掴み、引数・例外・注意点を読み切る。dir → help → 試す の小さなサイクルを回すと、標準ライブラリも外部ライブラリも怖くなくなる。自作関数にも docstring を付ければ、あなた自身のコードも “help 可能”になり、未来の自分と仲間が迷わなくなります。
