概要
「IF と AND と OR が入り乱れて、式が長すぎて読めない」
「条件を少し変えたいだけなのに、どこを直せばいいのか分からない」
「複雑な判定ロジックを“意味のある名前”で整理したい」
そんなときに Excel で圧倒的に役立つのが LET 関数です。
LET は、
複雑な条件式に“名前”を付けて分解し、読みやすく・修正しやすくする
ための関数です。
あなたが書いた長い式を「日本語の変数名」で整理できるので、
ロジックが一気に“可読化”されます。
LET の基本
LET の書式
=LET(名前1, 値1, 名前2, 値2, …, 最後に返す式)
動きはこうです。
- 名前1 に 値1 を代入
- 名前2 に 値2 を代入
- 最後の式で、それらの名前を使って計算する
つまり、
「条件式にラベルを付けて、後ろで再利用する」
という仕組みです。
LET を使うと何が良くなるのか？
BEFORE：可読性が低い式
=IF(AND(B2>=100000, C2>=10000, OR(D2="A", D2="B")), "優良", "対象外")
- どこが売上条件？
- どこが利益条件？
- D2 の条件は何を意味している？
読み手に優しくありません。
AFTER：LET で可読化
=LET(
売上条件, B2>=100000,
利益条件, C2>=10000,
ランク条件, OR(D2="A", D2="B"),
優良条件, AND(売上条件, 利益条件, ランク条件),
IF(優良条件, "優良", "対象外")
)
- 「売上条件」「利益条件」「ランク条件」など意味が一目で分かる
- 修正したい条件だけを上で直せばよい
- 最終判定は
優良条件だけ見れば理解できる
複雑な式ほど、LET の効果が大きくなります。
LET で複雑条件を分解するテンプレート
基本テンプレート
=LET(
条件A, （条件式A）,
条件B, （条件式B）,
条件C, （条件式C）,
最終条件, （条件A と 条件B と 条件C を組み合わせた式）,
IF(最終条件, "○○", "××")
)
この型を覚えておけば、
どんな複雑な条件式でも“意味のある名前”で整理できます。
実例：複雑な条件を LET で読みやすくする
例1：売上 × 利益 × ステータスで判定
前提：
- B2：売上
- C2：利益
- D2：ステータス（”A” / “B” / “C”）
条件：
- 売上 100,000 以上
- 利益 10,000 以上
- ステータスが A または B
これを LET で可読化するとこうなります。
=LET(
売上条件, B2>=100000,
利益条件, C2>=10000,
ステータス条件, OR(D2="A", D2="B"),
優良条件, AND(売上条件, 利益条件, ステータス条件),
IF(優良条件, "優良", "対象外")
)
どの条件が何を意味しているか、
式を見ただけで理解できます。
例2：期限切れ × 未処理 × 重要度で判定
前提：
- A2：期限日
- B2：ステータス（”未処理” / “処理中” / “完了”）
- C2：重要度（”高” / “中” / “低”）
条件：
- 期限日が今日より前
- ステータスが未処理
- 重要度が高
=LET(
期限切れ, A2<TODAY(),
未処理, B2="未処理",
高重要度, C2="高",
要対応条件, AND(期限切れ, 未処理, 高重要度),
IF(要対応条件, "要対応", "")
)
複雑な条件でも、
「期限切れ」「未処理」「高重要度」と名前を付けるだけで
ロジックが一気に読みやすくなります。
例3：数値範囲の複雑な判定
前提：
- A2：点数
条件：
- 90以上 → S
- 70〜89 → A
- 50〜69 → B
- 30〜49 → C
- それ以外 → D
=LET(
S条件, A2>=90,
A条件, AND(A2>=70, A2<90),
B条件, AND(A2>=50, A2<70),
C条件, AND(A2>=30, A2<50),
IFS(
S条件, "S",
A条件, "A",
B条件, "B",
C条件, "C",
TRUE, "D"
)
)
IFS と LET の組み合わせは、
「複雑な評価ロジック」を整理するのに最強です。
LET を使うときのコツ
1. 名前は“日本語”で OK
- 売上条件
- 利益条件
- 期限切れ
- 高重要度
など、意味が分かる名前にすると可読性が爆上がりします。
2. 条件式を上で定義し、下で組み合わせる
「条件を上で定義 → 最後に組み合わせる」
という流れを徹底すると、式が壊れにくくなります。
3. 長い式ほど LET の効果が大きい
IF と AND と OR が入り乱れる式ほど、
LET による可読化のメリットが大きくなります。
例題
問題1
B2 に売上、C2 に利益が入っています。
売上>=100,000 かつ 利益>=10,000 のとき「優良」、
それ以外は「対象外」と表示する式を、
売上条件・利益条件・優良条件 を LET で定義して書いてください。
=LET(
売上条件, B2>=100000,
利益条件, C2>=10000,
優良条件, AND(売上条件, 利益条件),
IF(優良条件, "優良", "対象外")
)
問題2
A2 に期限日、B2 にステータスが入っています。
期限日<TODAY() かつ ステータス=”未処理” のとき「要対応」、
それ以外は空白とする式を、
期限切れ・未処理・要対応条件 を LET で定義して書いてください。
=LET(
期限切れ, A2<TODAY(),
未処理, B2="未処理",
要対応条件, AND(期限切れ, 未処理),
IF(要対応条件, "要対応", "")
)
問題3
A2 に点数が入っています。
90以上→S、70以上→A、50以上→B、それ以外→C
という評価を、
S条件・A条件・B条件 を LET で定義して IFS で返す式を書いてください。
=LET(
S条件, A2>=90,
A条件, AND(A2>=70, A2<90),
B条件, AND(A2>=50, A2<70),
IFS(
S条件, "S",
A条件, "A",
B条件, "B",
TRUE, "C"
)
)
問題4
B2 に数量、C2 に単価が入っています。
数量>0 かつ 単価>0 のときだけ 数量×単価 を返し、
それ以外は空白を返す式を、
数量有効・単価有効・有効条件 を LET で定義して書いてください。
=LET(
数量有効, B2>0,
単価有効, C2>0,
有効条件, AND(数量有効, 単価有効),
IF(有効条件, B2*C2, "")
)
問題5
A2 に点数が入っています。
80以上→「優」、60〜79→「良」、40〜59→「可」、それ以外→「不可」
という評価を、
優条件・良条件・可条件 を LET で定義して IFS で返す式を書いてください。
=LET(
優条件, A2>=80,
良条件, AND(A2>=60, A2<80),
可条件, AND(A2>=40, A2<60),
IFS(
優条件, "優",
良条件, "良",
可条件, "可",
TRUE, "不可"
)
)
まとめ
LET は、複雑な条件式を 「意味のある名前」 で分解し、
式を 読みやすく・修正しやすく・壊れにくく するための強力な関数です。
- 条件式を上で定義
- 最後に組み合わせて判定
- 日本語の名前で OK
- IF / AND / OR / IFS と相性抜群
複雑な式ほど LET の効果は絶大です。
あなたが今使っている表の中で
「この式、長すぎて読めないな…」と思うものがあれば、
ぜひ LET で“可読化”してみてください。
Excel が一気に扱いやすくなります。