hasOwnProperty とは何か
hasOwnProperty は「そのオブジェクト“自身”が、指定したキー（プロパティ）を持っているか」を真偽値で返すメソッドです。ここが重要です：“継承（プロトタイプ）上のキーは含みません”。in 演算子が“自分＋継承”を調べるのに対して、hasOwnProperty は“自分だけ”を厳密に判定します。
const base = { kind: "base" };
const obj = Object.create(base); // base を継承
obj.name = "Alice";
console.log(obj.hasOwnProperty("name")); // true（自身のキー）
console.log(obj.hasOwnProperty("kind")); // false（継承キーは除外）
基本の使い方（自前のキーだけを確認する）
直接呼び出す
const user = { id: 1, name: "Alice" };
user.hasOwnProperty("id"); // true
user.hasOwnProperty("age"); // false
ここが重要です：hasOwnProperty は「キーの存在」を判定します。値が undefined でも“キーがあれば”true になります。
const u = { x: undefined };
u.hasOwnProperty("x"); // true（キーはある）
安全な呼び出し（プロトタイプが変でも正しく動かす）
// もっと安全な一般形（推奨）
Object.prototype.hasOwnProperty.call(user, "id");
ここが重要です：対象が「hasOwnProperty を上書きしている」「プロトタイプが切られている（Object.create(null)）」などでも、常に正しく動きます。
in 演算子や Object.hasOwn との違い（選び方の核心）
in 演算子との違い
in は“自分＋継承”を含めた存在判定、hasOwnProperty は“自分だけ”。
const base = { kind: "base" };
const obj = Object.create(base);
("kind" in obj); // true（継承にある）
obj.hasOwnProperty("kind"); // false（自分には無い）
ここが重要です：データ検証や“送るフィールドを自分のキーだけに限定したい”場面では hasOwnProperty が適切です。UI の既定値を継承で提供するような場面では in が便利です。
Object.hasOwn（ES2022）の推奨
Object.hasOwn(obj, "name"); // true/false（静的メソッド）
ここが重要です：Object.hasOwn は“上書きやプロトタイプの影響”を受けず、call を書かずに済むため読みやすく安全です。新しめの環境ならこちらを使いましょう。
よくある落とし穴と回避（深掘り）
hasOwnProperty を上書きしてしまう
const bad = { hasOwnProperty: () => false }; // 上書き
// bad.hasOwnProperty("x") は信用できない
Object.prototype.hasOwnProperty.call(bad, "x"); // これなら安全
ここが重要です：第三者からの入力・不明な形のオブジェクトには“call で呼ぶ”のが鉄則です。
Object.create(null)（プロトタイプ無し）での判定
const dict = Object.create(null);
dict.id = 1;
// dict.hasOwnProperty は undefined（持っていない）
Object.prototype.hasOwnProperty.call(dict, "id"); // true（安全に判定）
値と存在の混同
const obj = { a: 0, b: null };
obj.hasOwnProperty("a"); // true（キーあり、値は 0）
obj.hasOwnProperty("b"); // true（キーあり、値は null）
obj.hasOwnProperty("c"); // false（キーなし）
ここが重要です：“存在判定”と“値の内容”は別です。値チェックは === undefined や === null などで行います。
配列・疎配列での使い方（穴の判定に強い）
スロットに値があるか（“穴”かどうか）
const arr = [];
arr[2] = "X"; // [ <2 empty items>, "X" ]
0 in arr; // false（穴）
arr.hasOwnProperty(0); // false（自前のキーなし）
arr.hasOwnProperty(2); // true（自前のキーあり）
ここが重要です：配列の“穴”判定に hasOwnProperty は有効です。forEach/map は穴をスキップする挙動と合わせて理解すると、ループ設計が安定します。
実践レシピ（安全な存在チェックと整形）
必須フィールドの検証（継承を除外）
function validateUser(u) {
if (u == null) return { ok: false, reason: "missing object" };
if (!Object.hasOwn(u, "id")) return { ok: false, reason: "missing id" };
if (!Object.hasOwn(u, "name")) return { ok: false, reason: "missing name" };
return { ok: true };
}
送信前に“自前のキーだけ”収集
function ownEntries(obj) {
const out = [];
for (const k in obj) {
if (Object.hasOwn(obj, k)) out.push([k, obj[k]]);
}
return out;
}
ユーザー入力キーの安全化（危険キーを除外）
function safeAssign(target, input) {
for (const [k, v] of Object.entries(input)) {
if (!["__proto__", "constructor", "prototype"].includes(k)) {
target[k] = v;
}
}
return target;
}
ここが重要です：プロトタイプ汚染の温床になり得るキーは受け付けない。存在判定は Object.hasOwn を使うと堅牢です。
まとめ
hasOwnProperty は“自分が持つキーだけ”を判定するための基礎メソッドです。継承を含める in と役割が違い、入力検証や送信フィールドの限定に適しています。未知のオブジェクトやプロトタイプなしの辞書には Object.prototype.hasOwnProperty.call(obj, key) を、環境が対応しているなら Object.hasOwn(obj, key) を使うと安全で読みやすい。値チェックとは切り分け、配列の穴判定にも活用すれば、初心者でも意図どおりで壊れにくい存在確認が書けます。
