GMKtec EVO-T2S の製品概要
GMKtec EVO-T2Sは、IntelのCore Ultra X7 358Hを中核に据えたハイエンド志向のAIミニPCだ。小型の筐体に64GBのLPDDR5Xメモリ、Intel Arc B390、最大180TOPSのAI処理性能、10GbEと2.5GbEのデュアルLAN、USB4、OCuLinkなどを凝縮し、一般的な省スペースPCの枠を大きく超えた構成が目を引く。ローカルAI、ソフトウェア開発、動画編集、複数画面運用、ネットワークを活かした重めの業務環境までを一台でこなすことを狙ったモデルであり、単に小さいだけではない、用途をはっきり持った高性能ミニPCに仕上がっている。
特徴
AI処理に強く振った設計
- 最大180TOPSのAI性能:CPU、GPU、NPUを組み合わせたシステム全体で最大180TOPSのAI処理性能を備える。ローカル環境で生成AIやAI支援機能を動かしたいニーズに照準を合わせた構成で、ミニPCとしてはかなり踏み込んだ性能水準にある。
- NPU単体でも50TOPSに対応:内蔵NPUは最大50TOPSに対応しており、低消費電力でAI処理を回しやすい。AI機能を常時使うPC環境との相性がよく、日常業務の延長でAIを取り込んでいきたいユーザーにも扱いやすい。
- ローカルAIを試しやすい構成:大容量メモリと高帯域メモリを組み合わせることで、クラウド依存ではなく手元のPCでAIモデルを扱いやすい。外部にデータを出しにくい業務や、継続的にAIツールを使う運用とも相性がよい。
- 買ってすぐAI用途に入りやすい方向性:AI対応を前面に打ち出した設計思想が明確で、単なる高性能ミニPCではなく、AI活用まで含めた使い始めやすさが重視されている。
最新世代CPUと強力な内蔵GPU
- Core Ultra X7 358Hを搭載:Intel 18Aプロセスで製造されるCore Ultra X7 358Hを採用し、16コア16スレッド構成で動作する。Pコア、Eコア、低電力Eコアを組み合わせることで、重い処理から日常作業まで幅広く対応しやすい。
- Intel Arc B390を内蔵:内蔵GPUとしてIntel Arc B390を搭載し、12 Xeコア、最大2.5GHz動作、レイトレーシング対応という、統合GPUとしてはかなり強い仕様になっている。軽めから中程度のゲーム、GPU支援を使う制作作業、AI推論補助まで期待できる構成だ。
- CPU性能だけでなくGPU性能も重視:ミニPCではCPUばかりが注目されがちだが、本機はGPU側の戦力も大きい。映像、描画、生成系タスクまで視野に入れた設計で、用途の広さにつながっている。
- 高負荷時を見据えた電力モード:35W、45W、54Wの電力モードを切り替えられ、ピーク時は60Wまで引き上げられる。静音性を優先する使い方から、性能を優先する使い方まで調整しやすい。
64GBメモリを標準搭載する余裕
- LPDDR5X 64GBを標準搭載:64GBのLPDDR5X-8533メモリをオンボードで搭載する。ブラウザ、開発環境、画像編集、仮想環境、AIツールなどを並行利用する場面でも余裕を確保しやすい。
- 高帯域メモリが内蔵GPUやAI用途に効く:統合GPUやAI処理では、容量だけでなく帯域の広さも重要になる。本機のLPDDR5X-8533はその点で有利で、応答性や処理の安定感に寄与しやすい。
- 増設前提ではなく最初から大容量:後から細かく足すというより、最初から必要な余裕を確保して長く使う方向の設計だ。構成を決め打ちしやすい代わりに、用途が明確な人ほど満足しやすい。
ストレージと拡張性の考え方が本格的
- PCIe 4.0 SSDモデルを用意:1TBのM.2 NVMe SSDを搭載する標準構成が用意されており、OSやアプリ、制作データを保存する日常運用に十分な土台がある。
- PCIe 5.0対応スロットを備える:内部にはデュアルM.2 2280スロットを備え、PCIe 5.0 ×4とPCIe 4.0 ×1の構成に対応する。小型機ながら、将来的な高速ストレージ運用を視野に入れた作りだ。
- AI SSD構成も選べる:Phison AI SSD 853GB(768GB + 85GB)を組み合わせた構成も存在し、AI用途をさらに強く意識した選択肢が用意されている。一般的なミニPCにはない切り口だ。
- 最大8TB×2の内部拡張に対応:内部拡張の上限も大きく、データ量が膨らみやすいAI・動画・開発用途でも容量設計をしやすい。
端子構成が非常に充実している
- USB4を前後に1基ずつ搭載:40Gbps対応のUSB4 Type-Cを前面と背面に1基ずつ装備し、映像出力や高速周辺機器接続に対応する。高速外付けSSDやドックとの相性もよい。
- USB-Aも十分に確保:前面にUSB 3.2 Gen 2 Type-Aを2基、USB 2.0 Type-Aを1基、背面にUSB 2.0 Type-Aを2基搭載する。キーボード、マウス、USBメモリ、周辺アクセサリをまとめて接続しやすい。
- 映像出力が豊富:HDMI、DisplayPort、デュアルUSB4を組み合わせ、最大4画面出力に対応する。マルチディスプレイ環境を省スペースで構築したい人に向く。
- OCuLinkでeGPU拡張に対応:OCuLink(PCIe 4.0 ×4)を備えており、将来的に外部GPUをつないで性能を伸ばす余地がある。小型PCでも拡張の逃げ道を残している点が魅力だ。
- デュアル有線LANを装備:10G RJ45と2.5G RJ45を同時に搭載する。高速NAS、ローカルサーバー、社内ネットワーク、複数系統の有線接続を活かしたい環境に向いている。
- 音声入出力も使いやすい:3.5mmオーディオコンボジャックを備え、日常利用から会議、制作補助まで扱いやすい構成になっている。
通信機能と周辺適応力
- Wi‑Fi 7対応:有線だけでなく無線も最新世代に対応しており、高速回線環境を活かしやすい。配線を最小限にしたデスク構成にもなじみやすい。
- Bluetooth 5.4対応:ワイヤレスキーボード、マウス、ヘッドホン、周辺機器との接続もしやすく、デスクまわりをすっきりまとめやすい。
小型でも冷却を軽視していない
- VCクーリングとデュアルファン設計:高性能CPUと高帯域メモリを小型筐体で安定して動かすため、VCクーリングとデュアルファンを採用している。性能だけ先行した無理な小型化ではなく、持続性まで考えた構成だ。
- 高さに余裕を持たせた筐体:薄さ最優先ではなく、冷却効率や端子構成を両立しやすいサイズ感を取っている。そのため、見た目以上に“実用本位”の設計思想が感じられる。
- 静音性と性能の両立を狙いやすい:電力モードの切り替えと冷却設計の組み合わせにより、用途に応じたバランスを取りやすい。常時全開の尖ったマシンではなく、日常的に扱いやすい高性能機としてまとめられている。
ミニPCとしては用途の幅が広い
- AIだけに閉じない実用性:ローカルAIが注目点である一方、開発、マルチタスク、動画編集、複数画面運用、軽めから中程度のゲームまで幅広く対応できる。高性能な作業用PCを小さくまとめたい人に向いた一台だ。
- 省スペースと本格仕様を両立:据え置き型ワークステーションほど場所を取らず、それでいて端子やネットワーク、ストレージ拡張、AI活用まで見据えている。デスク環境の密度を高めたい人に刺さる方向性だ。
スペック一覧
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | GMKtec EVO-T2S |
| 製品カテゴリ | AI対応ミニPC |
| CPU | Intel Core Ultra X7 358H(Intel Core Ultra Series 3 / Panther Lake) |
| 製造プロセス | Intel 18A |
| CPUコア / スレッド | 16コア / 16スレッド |
| コア構成 | Performanceコア 4基 + Efficientコア 8基 + 低電力Efficientコア 4基 |
| Pコア動作クロック | ベース 1.9GHz / 最大ターボ 4.8GHz |
| Eコア動作クロック | ベース 1.5GHz / 最大ターボ 3.5GHz |
| 低電力Eコア動作クロック | ベース 1.5GHz / 最大ターボ 3.3GHz |
| キャッシュ | 18MB Intel Smart Cache |
| CPUパッケージ | FCBGA2540 |
| CPUパッケージサイズ | 50mm × 25mm |
| GPU | Intel Arc B390 |
| Xeコア数 | 12基 |
| GPU最大動的周波数 | 2.5GHz |
| GPU機能 | ハードウェアレイトレーシング対応 |
| GPU AI性能 | 最大122TOPS(INT8) |
| NPU | 内蔵NPU |
| NPU AI性能 | 最大50TOPS(INT8) |
| システム全体のAI性能 | 最大180TOPS |
| メモリ | 64GB LPDDR5X(オンボード) |
| メモリ速度 | 最大8533MT/s |
| ストレージ(標準構成) | M.2 2280 NVMe PCIe 4.0 ×4 SSD 1TB |
| ストレージ(AI SSD構成) | M.2 2280 NVMe PCIe 5.0 ×4 SSD / Phison AI SSD 853GB(768GB + 85GB) |
| 内部ストレージ拡張 | デュアル M.2 2280 スロット |
| M.2構成 | 1基:PCIe 5.0 ×4 / 1基:PCIe 4.0 ×1 |
| 内部ストレージ最大容量 | 8TB ×2 |
| OS | Windows 11 Pro |
| 対応OS | Windows 11 Pro、Ubuntu / Linux |
| 無線LAN | Wi‑Fi 7(RZ717、最大2.9Gbps) |
| Bluetooth | Bluetooth 5.4 |
| 有線LAN | 10G LAN + 2.5G LAN |
| 前面USB Type-C | 1 × USB4 Type-C(PD 3.0、最大100W入力 / DP 4K@60Hz / 40Gbps) |
| 前面USB Type-A | 2 × USB 3.2 Gen 2 Type-A(10Gbps)、1 × USB 2.0 Type-A(480Mbps) |
| 前面音声端子 | 1 × 3.5mmオーディオコンボジャック |
| 背面USB Type-C | 1 × USB4 Type-C(PD 3.0、最大100W入力 / DP 4K@60Hz / 40Gbps) |
| 背面USB Type-A | 2 × USB 2.0 Type-A |
| 映像出力端子 | 1 × HDMI 2.1 TMDS(4K@60Hz)、1 × DisplayPort 1.4(8K@60Hz、DP++)、USB4映像出力対応 ×2 |
| 同時画面出力 | 最大4画面出力 |
| 最大解像度 | 最大8K解像度対応 |
| 外部GPU拡張 | 1 × OCuLink(PCIe 4.0 ×4、ホットスワップ非対応) |
| 電源入力 | DC IN(5.5 × 2.5mm) |
| 電源仕様 | 19V / 7.8A |
| 付属ACアダプター出力 | 148.2W |
| 内蔵バッテリー | CMOSバッテリー内蔵 |
| セキュリティ | ケンジントンロックスロット搭載 |
| 冷却機構 | VCクーリング + デュアルファン設計 |
| ライティング | RGBライティング対応 |
| 電力モード | 35W(サイレント)/ 45W(バランス)/ 54W(パフォーマンス) |
| ピーク電力 | 最大60W |
| 本体サイズ | 154 × 151 × 73.6 mm |
| 本体重量 | 約950g |
総合評価とレビュー
GMKtec EVO-T2Sの魅力は、単純な“高性能ミニPC”という一言では収まりきらないところにある。いまの小型PC市場では、日常作業を快適にこなせること自体は珍しくなくなってきたが、本機はその先、つまりAI、制作、開発、マルチディスプレイ、ネットワーク活用まで含めた濃い使い方を、できるだけ小さな設置面積で成立させようとしている。その姿勢が、スペック表の数字以上にこの製品の個性になっている。
まず強みとして大きいのは、設計思想がかなり明確なことだ。Core Ultra X7 358H、64GBのLPDDR5Xメモリ、Intel Arc B390、最大180TOPSという組み合わせは、単に最新CPUを載せましたというレベルではない。ローカルAIを動かしたい、重めのソフトを同時に開きたい、複数のディスプレイをつないで仕事場を密に組みたい、そうした現実の利用シーンに対して、部品選定の方向がきれいに揃っている。特に64GBメモリが最初から確保されている点は大きく、最近のPCでは“足りるかどうか”より“余裕があるかどうか”が体感差になりやすいだけに、この余白の広さは確かな価値になる。
加えて、ミニPCでありながら端子構成が非常に攻めているのも見逃せない。USB4を2基、10GbEと2.5GbEのデュアルLAN、OCuLink、HDMI、DisplayPortを備える構成は、小型機らしい軽快さと、据え置き機らしい拡張性の両方を欲張ったものだ。ここが本機の面白いところで、購入した時点の完成度が高いだけでなく、その後の使い方の変化にもある程度ついてこられる。たとえば最初は仕事用の省スペースPCとして導入し、後から高速NASをつなぐ、eGPUを足す、複数モニターで制作環境を作るといった発展がしやすい。ミニPCはしばしば“完成品としては便利だが未来の余地が少ない”ものになりがちだが、EVO-T2Sはそこをかなり意識している。
性能面でも、この製品はバランスの取り方がうまい。もちろん、価格だけを見ればもっと安いミニPCはいくらでもあるし、GPU性能だけを最優先するなら専用GPU搭載機のほうが分かりやすい。しかしEVO-T2Sは、CPU・GPU・NPU・メモリ・ネットワーク・拡張性をひとつの箱に高密度でまとめている点に価値がある。とくに“机の上を広く使いたいが、性能は妥協したくない”という人にとっては、このサイズ感でここまで盛り込んでいること自体が武器になる。大型デスクトップを置きたくない、けれど普通の小型PCでは物足りない。その中間地帯をかなり本気で取りにきた一台だと感じる。
一方で、弱みもはっきりしている。最大のハードルはやはり価格だ。30万円台前半から中盤という価格帯は、ミニPCとして見るとかなり高額で、購入時には自然と他ジャンルの製品まで競合に入ってくる。同じ予算なら、より強い専用GPUを積んだデスクトップや、別方向で完成度の高いノートPCも視野に入る。つまり本機は、スペックが高いから自動的におすすめできる製品ではなく、この小型筐体と設計思想にお金を払う意味を理解できる人向けのモデルだ。言い換えれば、目的が曖昧なまま買うと価格の重さだけが残りやすい。
もうひとつの弱みは、メモリがオンボードであることだ。64GBという容量そのものはかなり魅力的だが、あとから増設して育てる方向には向かない。いま必要十分でも、数年後により大きなAIモデルや、さらに重い制作環境を前提にしたくなったとき、柔軟に追従しにくい部分はある。最初から完成度の高い構成で長く使うタイプの製品であり、可変性を楽しむPCではない。この点は、小型化と高帯域メモリを優先した結果でもあるので単純な欠点とまでは言わないが、購入判断ではかなり重要だ。
また、AI性能の見せ方にも冷静さは必要だ。最大180TOPSという数字は確かに華やかだが、実際の使い勝手は利用するアプリ、最適化状況、モデルサイズ、処理の振り分け方に左右される。数字だけで“何でも一気に速いAIマシン”と期待すると、用途によっては思ったほどでもない場面が出てくるはずだ。本機の真価は、派手な宣伝文句よりも、ローカルAIを含む複合的な作業環境を小さく、静かに、扱いやすくまとめているところにある。そこを理解して選ぶと満足度は高いが、数値のインパクトだけで選ぶと評価がぶれやすい。
おすすめできるユーザー像はかなり明確だ。まず、開発、制作、AI活用、複数アプリの同時並行といった“重めの仕事を日常的に行う人”には相性がよい。次に、デスクを広く使いたいが性能は落としたくない人、あるいはオフィスや自宅で静かに置ける高性能機を探している人にも向いている。さらに、10GbEやOCuLinkの価値が分かる人、つまり将来のネットワーク環境や拡張の可能性まで見てPCを選ぶ人には、この製品の面白さが伝わりやすい。逆に、Web閲覧やOffice中心の人、価格最優先の人、後からメモリを自由に足したい人、本格的なゲーム専用機を求める人には、やや過剰で、しかも割高に映るだろう。
総評として、GMKtec EVO-T2Sは万人向けの定番機ではない。ただし、刺さる人にはかなり深く刺さる。小型PCの便利さと、ワークステーション的な本気度、その間にある難しい領域を丁寧に詰めた製品であり、単なるミニPCの上位版ではなく、“高密度な作業環境を小さく持つ”という価値をきちんと商品化した一台だ。価格は軽くないものの、スペース効率、端子の豊富さ、64GBメモリ、AI対応、ネットワークの強さまで含めて必要としているなら、十分に検討する意味がある。逆に言えば、必要な理由がはっきりしている人ほど、この製品の良さを実感しやすい。コンパクトさを妥協ではなく武器に変えたいなら、EVO-T2Sはかなり魅力的な選択肢だ。
GMKtec EVO-T2S と GMKtec EVO-X2 との徹底比較
GMKtec EVO-T2SとGMKtec EVO-X2は、どちらも“AIをローカルで使う時代”をかなり強く意識したハイエンド級ミニPCだ。ただし、目指している理想像はかなり違う。EVO-T2Sは、Intel Core Ultra X7 358Hを軸に、NPUと扱いやすさ、導入しやすさ、低めの消費電力、ネットワークや外部拡張までをバランスよくまとめた一台であるのに対し、EVO-X2は、Ryzen AI Max+ 395とRadeon 8060S、最大128GBメモリという圧倒的な土台を武器に、より大きなローカルLLMや重いGPU寄り処理まで見据えた、よりパワー志向の一台に仕上がっている。似た価格帯に見えても、実際には「すぐに使いやすい高性能AIミニPC」を選ぶか、「大容量メモリと強い統合GPUでより大きなAIワークロードに踏み込むか」を選ぶ比較だと考えると分かりやすい。
まず結論
もし多くのユーザーに向けて一言で整理するなら、EVO-T2Sは“導入しやすく、仕事や日常の延長でAIを強く使っていける上質な実用機”、EVO-X2は“ローカルLLMや重量級の処理を本気で回したい人向けの攻めた高性能機”である。どちらが上かではなく、どちらが自分の使い方に深く噛み合うかで評価が大きく変わるタイプの2機種だ。
設計思想の違い
EVO-T2Sの個性は、AI性能の見せ方がとても現代的なところにある。CPU、GPU、NPUを組み合わせて最大180TOPSという大きな数字を掲げつつ、実際の製品像は、ローカルAIを試しやすく、業務用PCとしても整っていて、しかもミニPCらしい省スペース性をきちんと残している。単に性能のピークを競うというより、机の上に置けるサイズ感で“AIを日常化する”方向に寄せた設計といえる。
一方のEVO-X2は、もっと力のある方向へ踏み込んでいる。Ryzen AI Max+ 395、16コア32スレッド、Radeon 8060S、最大128GBのLPDDR5Xという構成は、一般的なミニPCの延長というより、小型ワークステーションに近い迫力がある。とくに統合メモリの大きさと帯域の広さを活かして、より大きなLLMをローカルで扱いたい、あるいはGPU寄りの重い処理もできるだけ小型筐体でこなしたい、という要求に応えやすい。
CPU性能の比較
CPU単体で見ると、EVO-T2SのCore Ultra X7 358Hは16コア16スレッド、EVO-X2のRyzen AI Max+ 395は16コア32スレッドという違いがある。コア数は同じでも、スレッド数とプラットフォームの性格はかなり違う。EVO-T2Sは効率とバランスを重視した構成で、日常の重めのマルチタスク、AI補助を交えた作業、開発、制作といった用途で扱いやすい。一方のEVO-X2は、より力押しできるCPU基盤を持ち、重い並列処理や、より上の処理密度が求められる場面で有利になりやすい。
ただし、この差は単純なベンチマーク優劣だけで見ないほうがいい。EVO-T2Sは35W、45W、54Wの電力モードを持ち、ピーク60Wで比較的スマートに性能をまとめているのに対し、EVO-X2は安定120W、ピーク140Wという、ミニPCとしてはかなり積極的な電力設定になっている。つまり、EVO-X2の強さは、より高い電力と発熱を受け止めて成立している強さでもある。机上の静かな相棒として使いたいのか、多少の熱やファンノイズも受け入れてでも大きな処理を回したいのかで、印象は変わってくる。
AI性能の見方
ここは数字だけだと誤解しやすいポイントだ。EVO-T2Sはシステム全体で最大180TOPS、EVO-X2はプロセッサ全体で最大126TOPSという表記になっているため、数字だけ追うとEVO-T2Sのほうが圧倒的に強そうに見える。しかし実際の使い勝手は、どこに強いかが違う。
EVO-T2Sは、NPU単体で50TOPS、GPUでもAI性能を持ち、軽量から中規模のローカルAI、会議要約、文字起こし、コード補助、AIアシスタント的な使い方と相性がよい。導入しやすく、日常のPC作業の中にAIを取り込みやすいのが持ち味だ。
EVO-X2は、NPUの数値自体は同じく50TOPS級だが、本当の強みはそこではなく、Ryzen AI Max+ 395とRadeon 8060S、そして大容量・広帯域の統合メモリが生み出す“より大きなモデルを載せやすい器”にある。ローカルLLMでは、単純なTOPSだけでなく、モデルがメモリに載るか、帯域がどれだけ効くかが体感を左右する。そこではEVO-X2のほうが一段上の土台を持っている。
ローカルLLMとの相性
ローカルLLMを目的にするなら、両者の差はかなりはっきり見えてくる。EVO-T2Sは64GB固定の構成で、中規模クラスのモデルをローカルで実用的に扱う方向に向く。AIを仕事道具として使い始めたい人、クラウドのAPI費用や外部送信を抑えたい人、試行錯誤をしながらローカル環境を整えたい人には、十分に魅力的な一台だ。
しかし、30B級から70B級の量子化モデルまで視野に入れ始めると、EVO-X2の優位がぐっと強くなる。最大128GB構成を用意し、GPU側に大きくメモリを割り当てられる設計は、一般的なミニPCではなかなか到達しにくい領域である。より大きなモデルをローカルで動かしたい、長文要約や重量級推論を1台で成立させたいという人には、EVO-X2のほうが明確に夢が大きい。
GPU性能の比較
GPUの差も大きい。EVO-T2SはIntel Arc B390を搭載し、統合GPUとしてはかなり強力な部類に入る。軽めから中程度のゲーム、GPU支援の制作作業、ローカルAI補助など、普通のミニPCよりは一段も二段も余裕がある。とはいえ、その強みは“統合GPUとしてかなり優秀”という位置づけであり、重量級の画像生成や、より強いGPU処理を主役に据える人にとっては限界も見えやすい。
EVO-X2のRadeon 8060Sは、より本格的だ。40コアのRDNA 3.5アーキテクチャを持ち、ミニPCの内蔵GPUとしてはかなり異例の強さを持つ。画像生成やGPU寄りのAI処理、ゲーム、重めの描画処理まで含めると、より幅広く、より高いレベルで戦いやすいのはEVO-X2のほうだ。ミニPCでありながら“GPU性能も妥協したくない”という欲張りな要求に、より真っ向から応えている。
メモリの考え方
メモリは、この比較の中でもっとも性格差が表れやすい部分だ。EVO-T2Sは64GBのLPDDR5X-8533をオンボードで搭載する。容量も十分大きく、速度も高く、AI用途や重いマルチタスクにはかなり心強い。ただし固定64GBである以上、将来さらに大きなモデルや重い運用に踏み込む場合の上限は見えやすい。
EVO-X2は64GBと128GBの構成があり、しかもLPDDR5X 8000MHzの大容量統合メモリを使える。単純なクロック表記ではT2Sが目を引くものの、実際のローカルAI運用では、容量の大きさと統合メモリの扱いやすさがかなり効く。とくに“とにかく大きなモデルを一度は手元で動かしてみたい”という人には、EVO-X2のほうが圧倒的に魅力的だ。
ストレージと拡張性
EVO-T2Sは、標準のPCIe 4.0 SSDに加え、PhisonのAI SSD構成を選べる点がユニークである。さらにデュアルM.2、PCIe 5.0対応、OCuLink、10G LAN + 2.5G LANという構成は、小型なのにかなり贅沢だ。とくにOCuLinkと10G LANの同居は、あとから使い方を広げやすい。最初はミニPCとして使い、必要に応じてeGPUや高速NAS、ローカルサーバー的な運用へ広げていく、そんな育て方がしやすい。
EVO-X2もデュアルM.2を備え、合計最大16TBまで対応するなど、ストレージ面ではかなり力が入っている。ただし、ネットワークは2.5G LAN 1基で、T2Sのような10G LAN構成は持たない。その代わり、SDカードリーダーやフロントの操作系など、日常の使い勝手に寄せた要素もある。総合的に見ると、拡張の“種類の豊かさ”はT2S、マシン自体の“巨大な器”はX2という印象だ。
端子構成の違い
EVO-T2SはUSB4を前後に1基ずつ備え、USB-Aも十分に確保し、HDMI、DisplayPort、OCuLink、10G/2.5G LANまで揃える。かなりプロユース寄りで、据え置きの高性能ワークスペースを小さく作るための端子構成だ。最大4画面出力や高速有線環境を前提にしたい人には、とても魅力的に映る。
EVO-X2もUSB4、HDMI 2.1、DisplayPort 1.4、USB-A群をしっかり備え、実用上の不足は少ない。ただ、T2Sのような10G LANやOCuLinkは持たないので、周辺の広げ方まで含めた“変化に強い据え置き機”としてはT2Sのほうが面白い。一方で、SDカードリーダーが前面にあるなど、日々触るPCとしての気軽さはX2にも魅力がある。
サイズと取り回し
EVO-T2Sは154 × 151 × 73.6mm、約950g。高性能ミニPCとしては十分コンパクトで、デスク上にも置きやすい。一方のEVO-X2は193 × 185.8 × 77mmとひと回り大きい。もちろん一般的なデスクトップに比べればまだまだ小さいが、ミニPCとして見ればEVO-X2は少し堂々としたサイズ感だ。つまり、EVO-X2は“小さい高性能機”ではあるが、T2Sほどの軽快さや置きやすさを最優先したモデルではない。ここにも両者の思想差がよく出ている。
価格の比較
取得できた情報では、EVO-T2Sの64GB + 1TB構成は330,999円、EVO-X2の64GB + 1TB構成は347,999円だった。価格差はあるものの、世界が変わるほど大きい差ではない。このため、比較は“少し安いほうを買う”ではなく、“どちらの思想にお金を払うか”になる。より扱いやすいAI実用機として見るならT2S、より大きなローカルAI環境やGPU寄り性能に価値を見るならX2、という判断がしっくりくる。
スペック比較表
| 項目 | GMKtec EVO-T2S | GMKtec EVO-X2 |
|---|---|---|
| CPU | Intel Core Ultra X7 358H | AMD Ryzen AI Max+ 395 |
| CPU世代 / 設計 | Core Ultra Series 3 / Panther Lake | Ryzen AI Max / Strix Halo系 |
| 製造プロセス | Intel 18A | TSMC 4nm FinFET |
| コア / スレッド | 16コア / 16スレッド | 16コア / 32スレッド |
| 最大クロック | Pコア最大4.8GHz | 最大5.1GHz |
| キャッシュ | 18MB Intel Smart Cache | L2 16MB / L3 64MB |
| GPU | Intel Arc B390 | Radeon 8060S |
| GPU構成 | 12 Xeコア | 40コア RDNA 3.5 |
| GPUクロック / 特徴 | 最大2.5GHz、レイトレーシング対応 | RDNA 3.5アーキテクチャ |
| NPU | 内蔵NPU | XDNA 2 NPU |
| NPU性能 | 最大50TOPS | 50TOPS |
| システム全体のAI性能 | 最大180TOPS | 最大126TOPS |
| メモリ | 64GB LPDDR5X(オンボード) | 64GB / 128GB LPDDR5X(オンボード) |
| メモリ速度 | 最大8533MT/s | 8000MHz |
| ストレージ | 1TB PCIe 4.0 SSD、または853GB Phison AI SSD構成 | 1TB / 2TB構成 |
| 内部ストレージ拡張 | デュアル M.2 2280 | デュアル M.2 2280 |
| 内部拡張仕様 | 1 × PCIe 5.0 ×4、1 × PCIe 4.0 ×1 | 各スロット PCIe Gen4 ×4、合計最大16TB |
| 最大内部容量 | 8TB ×2 | 8TB ×2 |
| 映像出力 | HDMI + DP + USB4 ×2、最大8K対応 | HDMI + DP + USB4、最大7680×4320 @ 60Hz |
| 有線LAN | 10G LAN + 2.5G LAN | 2.5G LAN ×1 |
| 無線通信 | Wi‑Fi 7、Bluetooth 5.4 | Wi‑Fi 7、Bluetooth 5.4 |
| USB4 | 2基 | 2基 |
| USB-A | USB 3.2 Gen2 ×2、USB 2.0 ×3 | USB 3.2 Gen2 ×3、USB 2.0 ×2 |
| 音声端子 | 3.5mmオーディオコンボジャック | 3.5mmオーディオコンボ + 3.5mm CTIA |
| カードリーダー | 記載なし | SDカードリーダー搭載 |
| 外部GPU拡張 | OCuLink(PCIe 4.0 ×4、ホットスワップ非対応) | 記載なし |
| 電力モード / TDP | 35W / 45W / 54W、ピーク60W | 安定120W、ピーク140W |
| 冷却 | VCクーリング + デュアルファン | パフォーマンスモード切替対応 |
| 電源 | 19V / 7.8A | 19.5V / 11.8A(約230.1W) |
| OS | Windows 11 Pro、Ubuntu / Linux対応 | Windows 11 Pro、Ubuntu対応 |
| サイズ | 154 × 151 × 73.6mm | 193 × 185.8 × 77mm |
| 重量 | 約950g | 約1.6kg |
どちらを選ぶべきか
日常業務とAI活用を両立したいならEVO-T2S
EVO-T2Sは、AIを“仕事の延長線上で自然に使う”人に向いている。たとえば、文章生成、会議要約、コード補助、複数アプリの同時利用、外部ディスプレイを増やした作業環境、10GbEを使ったネットワーク活用などを、コンパクトな一台で気持ちよく回したい人にはかなり魅力的だ。OCuLinkまで備えているので、後から広げる余地もある。全体として、バランスがよく、しかも未来の使い方に少し余白がある。この“ちょうどよさの質”がEVO-T2Sの魅力である。
より大きなローカルLLMやGPU寄り処理を重視するならEVO-X2
EVO-X2は、明らかに本気度が高い。より大きなモデルを載せたい、より強いGPU統合性能が欲しい、最大128GBメモリまで視野に入れたい、ミニPCというサイズの中で可能な限り大きなAI計算資源を持ちたい、そう考える人には非常に刺さる。価格は少し上がるが、その差以上に“器の大きさ”を感じやすい機種だ。とくにローカルLLMを深く掘っていく予定があるなら、最初からEVO-X2を選ぶ意味はかなり大きい。
総合評価
この2機種は、同じAIミニPCという括りに入っていても、実際にはかなり違う個性を持っている。EVO-T2Sは、AIを身近にしながら、仕事道具としての完成度、端子の豊富さ、低めの消費電力、取り回しのよさを上手にまとめた完成度の高い一台だ。対してEVO-X2は、より大きなメモリ空間と強い統合GPUを武器に、ローカルAIの本格運用へ踏み込みたい人に向いた、より野心的な一台である。
穏やかに言えば、EVO-T2Sは“賢くて気が利く上質な実用機”、EVO-X2は“多少の熱量や重さごと受け止めてでも高みを狙う実力機”だ。どちらも魅力的だが、万人に勧めやすいのはEVO-T2S、AI好きや開発好きの心を強く揺さぶるのはEVO-X2、という整理がいちばんしっくりくる。


